『我らの不快な隣人』の感想文 塩谷知子さん 

書評・感想(8)

塩谷知子さんから届いた体験的感想文をお届けします。
塩谷知子さんの監禁体験は『我らの不快な隣人』 208頁から211頁で紹介しています。先に拙著を読まれたほうがわかりやすいと思います。また、体験の詳細は「拉致監禁をなくす会」の塩谷知子の証言をお読みください。括弧は管理人の補足説明。

 
母からのメール
強制説得は親も子供も精神を犯される


私は監禁後実家の親とは3年間会うことはありませんでした。再び監禁されることを恐れたからです。

私が京都聖徒教会の宿舎

(当時の牧師は船田武雄。知子さんは監禁後、“真のクリスチャン”にさせられるために、写真の5階建ての建物に軟禁されていた。建物に吊るされている垂れ幕は、今はないが、統一教会を糾弾するもの)

を逃げ出してから、ずっとお世話になっていたTさん(家庭教会の主宰者)が、「母に会いに行こう」と言ってくださり、もう二度と監禁はしないことを約束してもらうために、実家へ帰りました。

その後、子供ができたこともあり実家と交流が再開しましたが、そのころから主人が毎晩悪夢にうなされ、仕事ができなくなり、うつ状態になりました。
主人は、両親や親族が牧師の指導の下、突然私を監禁したことによって、想像以上に傷ついていたのです。

(ご主人は、知子さんが監禁されたときは婚約者。突然、知子さんがいなくなったので、消息を求めて奔走していた。「哀しみの神?実体験回顧録を読めば、ご主人の心理の一端を理解することができる)

主人は私の両親に対して決して許すことのできない怒りをかかえて苦しみ、どこにも持って行き場のない思いを私にぶつけ続けました。
当時の私はどうして主人がそうなったのか理解できず、私を責める主人を責め、自分の無力さに悩み続けました。

そして2006年8月今度は私が鬱病を発症しました。

ようやく主人の苦しみを少しずつ考えるようになったと同時に、真っ暗な出口のないトンネルに入ってしまったような心境を味わい、「この思いどこかで味わった・・・」と思ったら、突然、拉致監禁されていたときのことが蘇ってきたのです。

私は、同じ拉致監禁で苦しみ、PTSDを発症された宿谷麻子さん(拙著?部の主人公)のHP「夜桜餡」を久しぶりに訪ねました。
 そして、そこに吐き出すように自分のつらかった過去の体験を書き込み、同じ痛みを味わった麻子さんによって励まされ、この不当な拉致監禁問題に対して、声を上げることの勇気をもらいました。

その後、宿谷さんの掲示板を読んだ米本さんとのメールでのインタビューが始まりました。膨大で細かい質問に答えるために、私の心の奥に潜んでいた様々な思いや体験を思い出す作業は、つらいことも多々ありましたが、吐き出すことで心が整理されていきました。

そして米本さんによって、主人の症状は拉致監禁のショックによるPTSDだということを知らされたのです。
当初は正直、100%それを受け入れることはできませんでした。

そんな中、米本さんの「我らの不快な隣人たち」の本が発刊され、今まで水面下であった拉致監禁の問題が表に出るというこの事実に、とても希望に感じました。あとがきのなかに
「しかし、孤独な気分になりながらも拉致監禁によって傷ついた人たちのことは世に問うべきだと思い続けた。」
と書かれていたこの一言に私は本当に涙を禁じえませんでした。
 こんな風に私達の為に声をあげてくださる方がいる・・・。どれほどありがたいことか!

あの監禁がなんだったのか、監禁後なにが起こったのか・・親や親族はもちろん多くの方に知ってもらいたい。そんな思いが日増しに強くなっていったのです。


2009年2月15日『拉致監禁をなくす会』の発足式に大阪から参加し、体験を話しました。

このころ、わたしは実名を使う不安が自然と消えていました。(拙著では藤井礼子という仮名で登場してもらっていた)。共に声を上げてゆくメンバーに出会えたからだと思います。

この発足式に参加し、なくす会の皆さんの様々な体験を聞く中で、主人は拉致監禁のショックによるPTSDだったとはっきり確信するようになりました。

この日は念願だった宿谷麻子さんにも出会え、この監禁によって傷を受けたこと、監禁は間違っているということなど、親に言い続けないといけないと、私を励ましてくれました。
この日を境に、親に対して「主人に謝ってもらわないといけない」と強く思うようになりました。

ここにいきつくまで、なんと16年もかかりました。

この発足式の2ヵ月後勇気をふり絞って実家へ帰りました。
母に「拉致から16年もたって今ようやくわかったことがある。」と、拉致の後、私たち夫婦にどんなことがあったか話しました。そして傷ついた主人に謝ってほしいと話しました。
しかし母は、

「私にも恨みがある!!謝ることはできない」

といい、私が逃げた後どんなにつらかったかを泣いて話しました。
母は「自分の人生のなかで最大の汚点だ」と言い、考えたくないようでした。

わたしたち親子は、交流はありましたが、 この話に触れるのは10数年ぶりでした。
母は、自分は親としてやるだけのことはしたと言い、マインドコントロールを解くためには、そうするしかなかったと言い、監禁の不当性をどんなに話しても、この時は客観的に考えられないようでした。

せめて米本さんの本を読んでほしいと思い、本の説明をし、母も読むと言ってくれたので、
置いて帰りました。この日、わたしはとても複雑な思いで帰りました。
このことを伝えるまで本当に苦しかった。でも伝えたけど・・・年老いた母にはこれを話してもやっぱり難しいかもしれない・・・。


その後、米本さんから「あの本を全部読むのはお母さんには大変かもしれないから、知子さんのところの部分だけでも読んでもらったらいいよ」とアドバイスをいただき、母にそのことをメールしました。

その夜母からメールがきました。

「お母さんは正直もう二度と思い出したくありませんでした。やっと普通に暮らせるようになっていたのに、あの夜、顔半分がしびれ夜も眠れませんでした。この年になるとすぐ体にきてしまいます。なんで又こんな思いをしなければいけないのかと情けないです。
考える気力もありません。思い出したくありません。本を読む気力もありません。私達を何と思ってもいいです。もう二度とこの事や宗教の話はしないで下さい。又読める時がきたら読むかもわかりません。・・・」

このメールを見て私も覚悟はしていたので、しかたないという思いでした。
しかし、翌日朝10時すぎごろ、またメールがきました。


「昨夜も眠れなく思い切って本を読みました。二人には何と謝っていいかわかりません。涙が溢れ、胸がつまりました。私自身もあの後、気が変になりそうで1ヶ月ほど無気力で寝こんでいました。
娘を何とか救いたいという切迫つまった思いからでした・・・省略・・・・・
今考えると、この方法(拉致監禁)は親も子供も精神を犯されると思います。こんな思いを二人にさせ、取り返しの出来ない過ちをしてしまい、心からお詫びします。Aさん(知子さんの夫)もなかなか私達を許す事はできないと思いますが、仕方ないと思います。
夫婦仲良く末永く支えあって生きてほしいと思います。勝手ですが、私たちはもうこれを最後に、この事にふれたくありません。あなた達が許すことができたら親が居ることを思い出してください。それまでは私たちの存在を忘れていきてください。・・・・以下省略」


このメールを読んで涙があふれました。

「お互い思いを封印し、お母さんもどんなにつらかったことか・・。親子は永遠に親子なんだから忘れることは出来ない。お母さん私を産んでくれて感謝してる」
という内容のメールを送りました。

お互いこのことに向かい合い、母も涙を流し、つらかった思いを吐き出し、米本さんの本を母が読んでくれ、拉致監禁は間違っていたと、理解し始めてくれました。
母自身もとても勇気のいることだったと思います。親も子も被害者であるということ話し合いました。

まだまだ始まったばかりですが、米本さんのこの本のおかげで一歩前進することができたのです。

主人は私が実家に話しに行ったこと自体に驚いていましたが、その後、主人の心に少しずつ変化があらわれてきたのです。

先日、今も監禁されているカープのメンバーの実家の様子を見に夫婦で一緒に行ってきました。私はだめもとで、「一緒に車で連れて行って欲しい」と頼んだところ、「いいよ」と快く引き受けてくれたのです。

以前なら「監禁」という言葉を使うだけでイライラし始め、主人には話せる状況ではありませんでしたが、当日現場ではフラッシュバックもおこさず、それ以来少しずつこの拉致監禁の問題に対して関心を持ち始るようになりました。

自分の苦しみをわかってほしいという思いから、いろんな方々のおかげで、主人の痛みを理解しようと自分の心が変わっていったことによって、母や主人の心の中の何かが変わってきているように感じています。
ときに殺伐とするような雰囲気になっていた、わが家の食卓が明るくなりつつあります。

この拉致監禁は当事者だけでなく、親や周囲の人間も、深く傷を受けます。
今ももっと大変な親子の問題をかかえている人たちがたくさんいるのです。
この絡まった心の糸をほどくのに、どれほどエネルギーがいることでしょう。

向き合うことはとても勇気がいりますが1つ1つ積み重ねながら、本当の親子関係、夫婦関係を築いてゆけるよう一歩ずつでも半歩ずつでも前進してゆけたらと思っています。

時間はかかっても必ず道は開けていくと実感している今日この頃です。

「拉致監禁なくす会」と米本さんに本当に感謝です!!
多くの方にこの本を読んでいただきたいです。


(注)PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、体験した当事者だけでなく、事件・事故を目撃した周囲の人も発症することが明らかになってきている。イラク戦争を想起すればわかりやすいが、爆弾で足を失った兵士ばかりでなく、それを目撃した兵士も、PTSDに苦しんでいる。アメリカに帰還した兵士のうち3割が重度のPTSDに陥っていると報道されている。

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コメント

ありがとうございます。

 塩谷様、静かにお母様もお父様も許し、愛して行かれる塩谷様に日本人に欠けている恩讐を赦し、愛する心の美しさを見ました。

壮絶な歩みに涙が出ると共に、
本当に嬉しく思いました。感謝で一杯になりました。

日本人の我々が変わる事が出来る事をこのように実践で示して下さる事に本当に希望を持ちました。

一日も早く、ご両親と和解し、お母様の心の傷も癒されますように願っております。

米本さん、心から、両者を愛されるあなたは、ご自分では、否定したいでしょうが、クリスチャンのように感じます。

愛する事から、様々な事をルポされていられますよから。

ありがとうございました

塩谷様。

お母様と塩谷様がこころを通わせるに至るまでの、かかわったすべての人たちの痛みがたくさん伝わってきました。

読まさせていただいて、たくさん泣きました。

これからの、塩谷様のご家庭がよき方向に向われるように、と願っております。

勇気ある投稿、ありがとうございました。
  • [2009/09/15 16:23]
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  • へのへのもへじ
  • [ 編集 ]
  • TOP ▲

向き合うことの大切さ

塩谷さんのメールから、向き合うことの大切さを感じさせられます。

こういう事件があるということに向き合うこと。

こういう事件の被害者に向き合うこと。

こういう事件の被害者の言葉に向き合うこと。

こういう事件の被害者の心に向き合うこと。

言葉はいらない。ただ向き合って、じっと耳を傾け、心を傾けること……。この向き合うことだけが、被害者の心の重荷を下ろさせることができる。

拉致監禁をなくす会のブログには、塩谷さんのような体験をされた方の証言がいっぱい掲載されています。関心のある方はおいでいただいて、掲示板への書き込みを通じて、被害者と向き合ってみてください。この場を借りて……
http://rachi.info/
ご招待します。

親も子も被害者、宗教戦争の犠牲者なのだなと思います。

逃げることなく互いに向きあうことさえ出来れば乗り越えられるのですね。



>日本人に欠けている恩讐を赦し、愛する心の美しさを見ました。

どのような信仰をお持ちなのか、お持ちでないのか存じませんが、何故このような事をお書きになるのか理解に苦しみます。


統一教会方特有の「日本人観」のような気がするのは・・・

・・・気のせいでしょうか。

皆様へ

私の投稿を読んでくださり、本当にありがとうございます。
心温まるお言葉をいただき、励ましのお言葉をいただき心から感謝しております。

拉致監禁は親も子も深く傷を受ける事実を多くの方に知っていただきたいと心から願っています。

この拉致監禁により、たくさんの人が親子関係を引き裂かれ、結婚しても孫の顔すらみてもらえず、交流が難しくなっている人たちがたくさんいます。
親も苦しくないはずがありません。

このことを解決していくには本当にエネルギーのいる作業になるのです。


私は自分自身と向き合うことで様々なことが見えてきました。
今は鬱病になってよかったと思っています。

うつになっていなかったら米本さんにも出会えていなかったですものね^^




塩谷知子様

塩谷知子様 お母さんが、米本さんの本を読んで拉致監禁の間違いに気がついて謝罪されて本当によかったですね。また、ご主人も立ち直りのきっかけになってなによりでした。私も米本さんの本を読みまして、拉致監禁という行為が親兄弟をズタズタにし夫婦離婚まで引き起こす家族崩壊につながる事を知り驚きを隠せませんでした。 私は以前、統一教会へ入会していました。この本を読んでいて当時の事がよみがえってきました。今は自分なりに、統一教会を検証しているところです。貴重なお話を聞かせていただきましてありがとうございました。

最新の記事が読みたい

携帯電話のサイトでは最新記事が最初に出てくるので読みやすいのですが、

パソコンのサイトでは最新記事が見つかり難いので困ります。

毎日のようにチェックしているのですがなんとかしていただけませんでしょうか。

小川様

メッセージいただきありがとうございます。
この問題に関心を持っていただき本当にうれしく思います。
今後ともよろしくお願いします。

私もたくさんの方々のお陰でようやく一歩踏み出したところです。
米本さんの本を読むといろんなことを考えさせられますね。
監禁を体験した私の友人は、「この本を読んでずいぶん心が整理された」と言っていました。

塩谷様へ

塩谷さん、ハンドルネームで失礼します。私も「拉致監禁をなくす会」ブログ編集のお手伝いをさせていただいております。遅ればせながら、米本さんのブログ記事を「なくす会」ブログで紹介させていただきました。
http://rachi.info/article/128687475.html
本当に大変な長い道のりですね。拉致監禁以外に息子娘を取り戻す方法はないと思っている人たちに、ぜひ読んでいただきたいです。
塩谷さん、これからもがんばってください。

「カルトの子」を読んで

このコメントが米本さんご本人に読んでいただけると信じて書きます。この夏偶然「カルトの子」を本屋で見つけて、一気に読ませていただきました。このタイトルは私がいつか自分の体験をもとに書いてみたいと思っていたタイトルと同じだったからです。取材をもとに、これだけ様々のカルトの中で苦しむ子どもたちに光を当ててくださったことに心より感謝いたします。私の母は今もすじ金入りのエホバの証人で、私自身、もの心ついたときから20歳ごろ命からがら脱退するまで、さんざん苦しめられてきました。あの頃、こんな本があればどれだけ自分は救われただろう、と思いました。45才になった今、現在でも苦しんでいる子どもたちになんとか救いの手を差し伸べられないか模索しています。著書の中で言われているように、現在認知度を高めてきた児童虐待の中には「カルトによる精神的虐待」も含まれるという事実に政府や周りの大人たちがもっと理解を示してほしいと思っています。私の子ども時代の宗教関係の友人は20代で自殺をしてしまいました。彼女のSOS信号に社会人になったばかりで余裕のなかった私が手を差し伸べられなかったことが今も悔やまれます。行政の中で生きる場を失った子どもたちのカウンセリングをするなど、なにか私でもできるようなアクションはあるものでしょうか?何か良いアドバイスがあれば、どうぞよろしくお願い致します。

「ありがとう」さんへ

 投稿ありがとうございました。
 また、拙著を読んでいただき、感謝感激であります。
 個人メールを送信いたしますので、どうかよろしくお願いいたします。

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