弁護士山口氏のコラムを評す(3)
山口コラム(3)
牽強付会3
山口広弁護士をはじめとする全国弁連(全国霊感商法対策弁護士会)に所属する弁護士たちは、水面下で続けられてきた強制説得の実態を知らなかったのだろうか。
私が拉致監禁の事実を知り驚愕したのは99年のことだ。そのことを同年に出版された別冊宝島『救いの正体』(「ドキュメント救出」)で明らかにした。
ちょうど今利氏とアントール美津子氏の裁判が始まったばかりの頃である。現在発売されている宝島SUGOI文庫『救いの正体』に収録されているので、読んでみてください。
この記事が載ってから数ヶ月のこと。記事を再録した『教祖逮捕』が出版された直後のことだった。山口広弁護士から電話があり「会いたい」と言ってきた。彼曰く、「あの記事によってすごいハレーションが起きているよ」
私は面食らった。
別冊宝島「ドキュメント救出」で拉致監禁のことに触れたのは全体の4分の1程度。大半が自宅での穏やかな脱会説得の場面を日記風に綴ったものだ。
その拉致監禁のことにしても、聖書至上主義の福音系教会と、聖書を比較的に自由に解釈する日本基督教団所属の教会とを区別し、前者はハードな拉致監禁、後者は南京錠ではなく“愛情の目で縛る”という物理的暴力のともなわないソフトな拉致監禁と明記している。
そのため、現在進行中の裁判には影響しないと考えていたし、清水、黒鳥両氏をはじめとする日本基督教団の牧師はハードな拉致監禁には反対していると思っていた。
だから、ハレーションの意味がわからず、面食らったのだ。
その前だったと思うが、やはり日本基督教団の川崎経子牧師から電話で「なぜこの時期にあんな記事を書いたのか」と詰問されたときも、狐につままれたような気分になった。
全国弁連は年に二回全国集会を開いている。山口広弁護士と会った直後に東京で開催された集会の夜の懇親会の場は、私と私の記事の評価で一色となり、「米本は統一教会のスパイ」という発言まで飛び出したという。懇親会に参加した元信者の母親から、この話を知らされたときには心底驚いた。※
※「ブログの骨格」の1999年参照。
なぜ、一部の牧師が行なっている拉致監禁のことを明らかにしただけで、スパイとまで酷評されなければならないのか・・。
懇親会の翌日だったと思うが、「宗教と人権弁護団ネットワーク集会」に出席した。そこで、拉致監禁が認められるのは精神保健福祉法(悪法)で定められているこれこれの場合だけといった説明をしたが、それに直接応えることなく、10数人の弁護士や牧師から『教祖逮捕』で書き下ろした「作られた言説-マインドコントロール論」を批判された。
弁護士の紀藤氏は「ルポライターは論なんか書かなくていいんだ」とまで発言した。てめえこそ、テレビにひょこひょこと登場せずに、弁護士業務に専念すればいいんだ。そう言い返してやりたかったが、多勢に無勢、沈黙するほかなかった。
弁護士の発言で印象深かったのは、やはり紀藤氏の発言だった。「ぼくたちは手弁当で統一教会の裁判をやっているんだ」。生活を犠牲にしてまで統一教会と真剣に闘っていると言いたかったのだろうが、「手弁当」には強い違和感を覚えた。「ブログの骨格」の1999年参照。
知り合いの編集者から、紀藤正樹弁護士がこんな釈明めいた話をしていたことを、聞いていたからだ。
「ぼくがジャガーに乗っているのは安全のためですよ」
統一教会の裁判と弁護士報酬金については、あらためて後述する。
今から考えると、当時は実にナィーブ(幼稚)だったと思う。
『我らの不快な隣人』(第8章暗い歴史)に書いた通り、福音系の牧師が68年に始めた拉致監禁という脱会手法は遅くとも80年代後半には日本基督教団の牧師に伝授され、前出の記事を書いた10年前には教団教派を問わず強制説得が一般的になっていた。
“愛情の目で縛る”ソフトなやり方を主張していたのは、日本基督教団の中でも杉本誠牧師だけ。それ以外はみんな保護説得という名の拉致監禁である。
だからこそ、その一端を明かしただけで、「すごいハレーション」が起きたのであり、スパイ発言まで飛び出したのだ。
全国弁連に所属する弁護士のすべてが拉致監禁の実態を知っていたかどうかはわからない。
ただ、オウム事件が起きたときテレビのワイドショーの常連コメンテーターだった福岡の平田広志弁護士(全国弁連のメンバー)が監禁場所を訪問していること(小出浩久『人さらいからの脱出』)、「青春を返せ裁判」の原告の大半が強制説得によって脱会していることからすると、かなりの弁護士が知っていたことは間違いない。
それだからこそ、比較的穏やかな「ドキュメント救出」はハレーション程度ですんだが、教会の勉強会で保護説得(監禁説得)を学ぶところから脱会までを詳細に綴った月刊現代のルポ「書かれざる宗教監禁の恐怖と悲劇」は、何らかの形で批判しておかなければならない。それで、山口広弁護士の文責によるコラム書評を『弁連通信』に載せたのだと思う。
今利裁判、アントール裁判で、牧師側が勝訴した事実を私が明らかにしていないような印象を与え、信者家族にとっては読むに値しない「お粗末な論文」だ、と。
山口コラムは「お粗末」ではない。実に政治性を帯びたコラムなのである。
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この項は、『我らの不快な隣人』300?303頁、388頁の注19を詳述したものです
≫ 弁護士山口氏のコラムを評す(4) 「勝利の裏側1」 へ続く
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- 弁護士山口氏のコラムを評す(1) (2009/02/03)
- [2009/02/07 00:28]
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コメント
こんな実態があったとは!
一つ一つの文章の裏にこんな実態があったことを知って驚いています。様々な妨害があるかもしれませんが、ブログを楽しみにしている読者もいるので、これからも続けてくださいね。
寒い折、ご自愛くださいませ。
感謝
左翼(無神論)の時代は終わった
必ず、このサイトを続けてください!!
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