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趣意書(5)-偏頗性に満ち満ちた福士判決文 

ストーカー事件の真相(20)

 宇佐美氏の控訴趣意書(5)-認定すべき事実を認定しなかったことの事実誤認

 福士判決文は、宇佐美氏側の供述証拠などをことごとく無視している点で、偏頗(へんぱ)性に満ち満ちている。



 公安担当の検察が宇佐美氏を起訴した内容は、宇佐美氏が「恋愛感情を充足させる目的」で「待ち伏せ行為」を行ったというもの。仮にそれが真実だとしても、宇佐美氏はKの婚約破棄がKの本心かどうかを確かめる行為だったと主張しているのだ。
 こうした場合、宇佐美氏の主張、彼の供述の一つ一つを検証する作業が必要である。

 そうした作業によって(その作業は判決文に反映される)、やはり宇佐美氏の行為はストーカー規制法に違反すると断じるのであれば、有罪判決にはどんなに不満があっても、それを甘受するしかない。
 しかし、控訴趣意書を判決文と比較しながら読めば、宇佐美氏の声を検証した形跡はまるでない。だから、偏頗なのである。検察の論告に合理的な疑いが生じるのであれば、「疑わしきは被告人の利益に」「推定無罪」の原則が適用されるべきである。それを無視した福士裁判官は近代以前、江戸時代の奉行所役人と何ら変わりがない。

*1 控訴趣意書は原文のママだが、適宜、改行、行空けを行い、一部の文字をゴチックにした。
*2 目次にある頁数を趣意書に生かした。 
*3 告訴人の固有名詞だけはイニシャル(K)とした。
*4 四角で囲ったところは、管理人の注釈。一部、敬称を略した。
*5 下線は、管理人が注目した記述。

目 次

第1 はじめに……1頁
1 本件控訴の概要・・・・・・1頁
2 被告人の主観に関連する背景事情の用語説明……1頁

第2 訴訟手続の法令違反……2頁
1 証拠調べ手続きに関する不服(弁護人請求証拠の不採用)……2頁
2 訴訟指揮に関する不服(弁護人に対する尋問制限)……3頁
3 審理不尽……4頁

(上記は「訴訟手続きの法令違反」を参照のこと)

第3 原判決の認定事実の中の事実誤認……5頁
1 原判決「犯行に至る経緯等」の①乃至⑭の記載中の事実誤認……5頁
(1) 認定事実③について……6頁
(2) 認定事実④について……6頁
(3) 認定事実⑤について……7頁
(4) 認定事実⑥について……7頁
(5) 認定事実⑧について……8頁
(6) 認定事実⑨について……9頁
(7) 認定事実⑭について……9頁
(8) 判決への影響……10頁

(上記は「認定事実の中の事実誤認」を参照のこと)

2 原判決の判示1乃至5の各行為についての犯行状況の記載中の事実誤認……10頁
(1) 判示1の行為の犯行状況……11頁
(2) 判示2の行為の犯行状況……12頁
(3) 判示3の行為の犯行状況……13頁
(4) 判示4の行為の犯行状況……14頁
(5) 判示5の行為の犯行状況……14頁
(6) 判決への影響……15頁

(上記は「認定事実の中の事実誤認」

第4 原審証拠上認定すべき事実を認定しなかったことの事実誤認……15頁
1 「被告人にはKの本心が分からなかった」と認定すべきこと……15頁
(1) 被告人の認識(総論)……15頁
(2) 認定事実①②関連……16頁
(3) 認定事実④関連……17頁
(4) 認定事実⑥関連……18頁
(5) 認定事実⑦⑬関連……18頁
(6) 認定事実⑧関連……20頁
(7) 認定事実⑩関連……21頁
(8) 認定事実⑪関連……21頁

(上記は「認定すべき事実を認定しなかったことの事実誤認」

2 判示各行為は恋愛感情充足目的の「待ち伏せ」にあたらないこと……22頁
(1) 総論……22頁
(2) 判示1の行為時の認識……23頁
(3) 判示2の行為時の認識……25頁
(4) 判示3の行為時の認識……26頁
(5) 判示4の行為時の認識……28頁
(6) 判示5前段の行為時の認識……31頁
(7) 判示5後段の行為時の認識……33頁
(8) 認識の認定に関する原判決の誤り……35頁
(9) 方法について……36頁

第5 法令適用の誤り……36頁
1 恋愛感情充足目的の解釈……36頁
2 「待ち伏せ」の解釈……37頁
3 「不安を覚えさせる方法」の認識……38頁
4 ストーカー規制法を適用すべき事案ではないこと……39頁

第6 量刑不当……40頁
1 動機の点……40頁
2 手段方法と結果の点……41頁

今回アップしたのはゴチックの部分。


2 判示各行為は恋愛感情充足目的の「待ち伏せ」にあたらないこと

  (1) 総論
 
 原判決は,被告人が,
「Kには被告人に対する恋愛感情及び結婚意思がないことを知りながら,終始,Kに強い恋愛感情を有し,Kと会い,どうにかして関係修復しようと考えていたことが明らかである」
 という前述のとおりの誤った認定を前提に,

「Kの父親の立ち回り先に,Kが所在するものと考え,Kの父親の車に取り付けたGPSの位置情報をもとにKの居場所を探していたのであるから,Kの父親の立ち回り先と思われる場所に出かけてその場で様子をうかがうなどの判示各行為は,Kと会うなどして,その様子を観察し,さらには,機会があればKと話をするなどして,Kと会いたい,Kとの関係を修復したいというKに対する恋愛感情を充足する目的で行われたもの」
 とし,判示各行為が,ストーカー規制法2条1項1号の「待ち伏せ」に当たると認定した。

 しかし,被告人は,Kに対し,家族的な愛情を持ち,Kの身の安全を心配して捜し続け,既に述べたとおり,究極的な目的は,Kの本心,<22頁>
 すなわち,被告人に対する結婚意思の有無を確認することであり,そのために,Kの居場所を捜し,Kの状況を探る目的で判示各行為を行ったのである。また,Kの本心が確認できれば,それを無視してまで,被告人自身のKに対する恋愛感情等を充足させようと考えていたのではない。

 下記(2)以下の各項の①で述べるとおり,判示各行為当時の被告人の具体的な認識からは,被告人に原判決が認定するような恋愛感情充足目的があったとは到底言えないことが明らかである。
 他方,下記(2)以下の各項の②で述べるとおり,判示各行為時において,もし仮に,被告人に恋愛感情充足目的があったならば,かえって各判示において認定された行為は,同目的を持った者の行動として,極めて不自然かつ不合理な行為であるから,その点からも,被告人が恋愛感情充足目的を持っていなかったことは明らかと言える。 

 
(2) 判示1の行為当時の被告人の認識

 判示1の時,被告人のGPS画面上には,Kの父の車の位置情報が,新宿御苑ダイカンプラザというマンション(以下「ダイカンプラザ」という)周辺に複数回出ていたので,被告人は,ダイカンプラザかその周辺マンションにKの居場所があり,父親が会いに来ているのかもしれない,という認識でその居場所を捜していた。

 被告人は,Kが行方不明になって以来,
「Kは拉致監禁され,マンションの一室に閉じ込められているのではないか」
 と心配し続けていたのであり,Kの脱会通知が統一教会本部宛に届いたのを知ったあとも,
「Kは偽装脱会をしており,周りからも真に脱会したのかまだ疑いを持たれて監視下にあり,自由な身ではないだろう」
 という推測を持って,Kの「居場所」を捜していたのであり,
「Kが居場所を出て父親の車に乗っているかもしれない」
 という発想には乏しかった(第7回公判被告人調書p29,第8回公判被告人調書p35-37,同調書添付の図面,第9回公判被告人調書,同調書添付の写真・図面)。

 判示1のパーキングに,Kの父の車が駐車してあることを発見したあとは,同パーキングのすぐ隣がダイカンプラザだったことから,被告人は,やはりKの父はダイカンプラザにいるKに会いに来ていて,同パーキングに車を駐車しているのではないかと推測した(第8回公判被告人調書p40)。

 また,被告人は,判示1の当時,Kの父親が判示1のパーキングの精算機で清算しているところは目撃したものの(被告人第9回,同尋問調書添付の写真4,現場見取り図),Kの姿は乗り込むところも車内に座っているところも全く見ていない(乙11・原審記録1372丁,第6回公判被告人調書p47~48)。

 そして,被告人は,既述のとおり,Kの居場所が駐車場周辺のマンション内にあり,そこに留められていると思い込んでいたのであり,父が車に乗る時点では,父だけがKの居るマンションから相模原の実家に帰るのだろ<23頁>
うという推測があったので,判示1のパーキングに停まっているKの父親の車の中にKが乗っていることを認識も予想もしていなかった(第6回公判被告人調書p47,第9回公判被告人調書p8)。

 原判決が述べるように「Kと会いたい,Kとの関係を修復したい」という恋愛感情の充足の目的を持って待ち伏せするとすれば,前提として,その場所が,被告人にとって,Kが来る又は居るかもしれないと予測される場所でなければ,待ち伏せする意味が全くないはずであるが,判示1のパーキングの精算機の近くから,Kの父親の車の中の様子をうかがっているときの被告人は,Kと会えるとは毛頭思っていなかったのであり,まさに,被告人にとって,恋愛感情充足目的で待ち伏せする意味は全くない状況であった。

 よって,被告人は,原判決認定の上記恋愛感情充足目的を持ってKを待ち伏せた,とは言えないというべきである。

 言わずもがなの補足説明になるかもしれないが、判示1をふつうの言葉で説明しておく。
 宇佐美氏はKが監禁されている場所を探していた。それには相模原市の自宅に戻った父親の動向を監視するのが手っとり早いと考えた。自宅から監禁場所に必ず向うことがあるはずと推測したからだ。
 ところが、24時間、父親を見張ることはできない。そこで、父親の車にGPSを設置することにした。
 GPS情報によって、父親の車が判示1周辺に駐車することがわかった。
 そこで、判示1の場所(最寄り駅は丸ノ内線・新宿御苑駅)に向い、駐車している父親の車を発見した。この周辺に監禁場所があると推測し、そして、周囲の建物を観察した結果、もっとも可能性があるのは「新宿御苑ダイカンプラザ」ではないかと考えた。
 この判示1の2010年6月22日の時点では、宇佐美氏はKは監禁された状態で、外出することはあり得ないと判断していた。それゆえ、車の中にKがいるなどとは思いもよらないことだった。

 ところが、Kの供述が正しければ、このときKは車の中にいた。そして宇佐美氏に見られていたという。
 この供述から、宇佐美氏の行為は「Kを待ち伏せしていた」ものと認定されてしまった。
 しかしながら、仮に車の中にいたKが宇佐美氏に見られたことが事実であったとしても、それがどうして「恋愛感情を充足させる目的」があった行為と認定されてしまうのか。理解不能であり、冤罪者をつくり出す認定の仕方と言わざるを得ない。
 
 否認事件で、福士裁判官が有罪判決を下した事件のすべてを精査したいものだ。


 もし仮に,被告人が,原判決認定の上記目的を持っていたとするなら,むしろ,判示1の行為の犯行状況として認定された被告人の行動には,以下のとおり不自然かつ不合理な点があり,原判決には,不整合・自己矛盾が生じる。
 この点からも,被告人は,上記目的を持ってはいなかったというべきである。

 即ち,原判決が認定した判示1の被告人の行為は,父親が車に戻るのを確認すると,被告人は,判示1のパーキングの出入口の横に設置された精算機近くに移動し,同所を出ようとするKの父親の車の中の様子をうかがっていたということであり,Kには,同所を通過して左折するKの父親の車を被告人が目で追うような感じで見ていたということである。
 
 もし仮に,被告人が,当時,原判決認定の目的,すなわち,
「機会があれば,Kと話をするなどしてKと会ってKとの関係を修復したい」
 と考えていたのであれば,被告人は,原判決も認定したとおり(原判決9~10頁),前記パーキングに駐車してある車を発見し,その様子をうかがっていたところにKの父親が車に戻るのを確認したのであるから,Kの父親が駐車した車に戻った直後を見計らい,車が動き出す前に,Kの父親又は同乗者に話しかけるというのがまさに,自然かつ合理的な行動である。

 しかし,被告人は,実際には,原判決の認定どおり,Kの父親らが車に乗り込む前に話しかける機会があることを認識していながら,その機会を全く利用せず,むしろ彼らが車に乗り込んで車が動き出し,話しかけることができない状況になってから,わざわざ車の中の様子をうかがう行動に出たものであり,原判決認定の恋愛感情充足目的を持っていた者の行動としては,明らかに不自然かつ不合理な行動である。
 
 なお,既に述べたとおり,被告人は,判示1の時においては,Kの父親の車が停まっていたパーキングと山口弁護士の事務所があるさわだビルとが,<24頁>
距離的に近いことに気がついておらず,Kが同事務所に行っていたとは知らなかったが,もし仮に,知っていたならば,被告人は,判示3の時の如く,同事務所のあるさわだビルの方に行ったはずである。また,そうであるならば,ダイカンプラザの玄関に入り「K」の表札を探す行為もしなかったはずである。


 (3) 判示2の行為当時の被告人の認識

 判示2の当時においては,本書第3の2(2)において既に述べた通り,被告人は,過去のGPSの発信記録が多く出た場所があったので,同場所がどのような場所なのか,またその周辺にKが住むアパート等があるかどうかを調べるため,判示2の場所周辺に行った(乙11・原審記録1372~1373丁,第6回公判被告人調書p48~49)。

 このとき被告人は,あくまで過去のGPSの位置情報に基づいて行動しており,当日のGPSの位置情報を確認しておらず(第8回公判被告人p2~5),また,電車で荻窪駅まで行き,荻窪駅から徒歩で目的地まで向かった。
 その具体的な経路は,第6回公判被告人調書添付の資料1に記入されたとおりであり,また,被告人が歩いた経路は,同資料2記載のとおりである。その間,被告人は,同場所付近を走行している車には関心がなく(第6回公判被告人調書p49,第8回公判被告人調書p5),歩いている間に,Kの父親の車を見ることもなかった(乙11・原審記録1373丁,第6回公判被告人調書p49)。

 他方,原判決は,判示2の場所付近で,いつもどおりコインパーキングを出ようとした際,その出入口から20m程離れた電柱のそばに被告人が居て,車の進行方向と同じ方向に歩いているのを見たとし,被告人がKを待ち伏せしたと認定する。

 しかしながら,前記のとおり,当時の被告人は,Kの父親の車を見ていないだけでなく,付近を走行中の車にも関心がなく,また,Kの乗った車が被告人の前を通ることやKが判示2の現場周辺に来ることは,全く考えていなかったのである。

 よって,判示2の道路付近の状況をただ確認するために,単に歩いていた被告人には,「機会があればKとの関係を修復したい」という恋愛感情充足目的など持ちようがなく,「Kを待ち伏せした」とは,到底言えない状況だったというべきである。

 なお,判示2当時においても,既述のとおり,被告人は,まだ山口弁護士の事務所の場所を地図上で把握しておらず,中務氏から受け取ったメールに記載された事務所住所を地図で確認することもしておらず,Kが山口弁護士の事務所に行くために新宿に行っていたことは知らなかった(第9回被告人調書p13~14)。

 もし仮に,被告人が,原判決認定の上記目的を持っていたならば,むしろ,<25頁>
判示2の行為の犯行状況として認定された被告人の行動には,以下のとおり不自然かつ不合理な点があり,原判決には,不整合・自己矛盾があるというべきである。

 即ち,判決が認定した判示2の行為は,被告人がGPSの位置情報により,Kの父親の車が新宿の山口弁護士の事務所の帰りに東京都杉並区内を経由し,判示2の道路付近を通過するのを知っていたことから,同所付近を確認するために出かけたという行為であり,また,Kは,車内から,車の進行方向と同じ方向に歩いているのを見たとも認定している。

 しかし,もし仮に,被告人が,原判決の認定どおり判示2の道路付近をKを乗せた車が通過する場所と知っていたとしても,そのような一瞬で通過して車が行ってしまうような場所に,「機会があれば,Kと話をするなどしてKと会ってKとの関係を修復したい」という恋愛感情充足目的をもって「待ち伏せ」するというのは,あまりに不自然かつ不合理な行動であることは明らかである。

 また,そのような通過点で,上記のような目的を持って待ち伏せするとすれば,少なくとも,車を追跡できるような態勢で「待ち伏せ」するのが自然かつ合理的であるはずだが,被告人は,判示2の道路付近を確認するために出かけた際,最寄駅までは電車を利用し,最寄駅から当該場所までは,徒歩で行っており,当初から車を追いかける気は全くなかったことは明らかである。 

 以上のとおり,上記恋愛感情充足目的をもって,父親の車が通過することを知っていたその付近の場所に,徒歩で出かけ,待ち伏せたとする原判決の認定は,余りに経験則に反しており,不自然で不合理な認定である。

 GPS情報で、判示2の場所でも、父親の車が留まることが多いことがわかった。そこで、その周辺に監禁場所があるのではないかと推測した宇佐美氏は、徒歩でその場所に向かい、周辺を探索した。

 ところが、Kは宇佐美氏の姿を発見した。それで、宇佐美氏の行為は「待ち伏せだ」と訴えた。
 前にも書いたことだが、仮にKが言うように、宇佐美氏の行為が待ち伏せだったとしても、そのことがどうして「恋愛感情を充足させる目的」だったと認定することができるのか。理解不能である。



 (4) 判示3の行為当時の被告人の認識 
 
 被告人は,判示1及び2の時に,現場周辺を探しても,これといった手がかりが見つからなかったところ,平成22年6月中旬に,ふと中務からの同年6月4日のメールを見て,山口弁護士の事務所住所を地図で調べ,判示1のパーキングと同事務所が近い距離にあることが分かり,その時初めて,Kの父親の車が新宿に行くのは,Kを乗せて山口弁護士の事務所に送り迎えしているからだろうと推測した(第9回公判被告人調書p14)。

 また,被告人は,判示2以後も,Kの父親の車が動く月1,2回の機会に,GPSの位置情報を確認し,同年9月頃までには,同車の移動経路が相模原の実家から荻窪に行き,荻窪から新宿に向かい,再び荻窪に戻り,相模原に帰るというパターンであることを把握するようになると共に,新宿に行く弁護士事務所に行くためであるとすると,荻窪に行くのは,そこにKの居場所があるからではないかと推測するようになった(第8回公判被告人調書p8~9,第9回公判被告人調書p15)。 <26頁>

 さらに,被告人は,本書第3の2(3)で述べた通り,荻窪周辺に住んでいるKが,相模原にいる父親により車で送迎されて新宿の弁護士事務所に行くこと自体が極めて不自然であり,しかも,30歳を過ぎた大人であるKが,両親と一緒に弁護士事務所に相談に行くこともまた不自然であると感じ,Kが,やはり未だに偽装脱会をしていて,それを両親や宮村氏から疑われているため,弁護士事務所に行くときも,両親に監視されながら来ているのではないかと推測した。
 
 そこで,被告人は,実際の工藤及び両親の様子を観察し,その雰囲気などを見て,前記推測が正しいかどうか確かめたいと思っていたところ(被告人第9回p16),判示3のときに,GPSにより,Kの父の車が相模原を出発した旨のメールを受信したので,弁護士事務所のあるさわだビル付近に行ったのである。

 被告人が実際に見たKは,後ろから両親に監視されているような雰囲気で,両親とは会話をすることもなく,表情も強ばっていたため,親子関係が良さそうな印象はなく,ますます,工藤が偽装脱会中であると考えるようになった(第8回公判被告人調書p12~13,第9回公判被告人調書p16)。

 以上のとおり,判示2のとき,被告人は,あくまでKとその両親の様子を観察することが目的だったのであり,当初からKに話しかけることは,全く考えていなかった。

 そもそも,被告人は,Kが両親と一緒にいる状況下では,普通に話をすることはできないだろうし,話しかけたとしてもKが本心を述べるとは考えられないし,また,弁護士事務所に向かっている途中であることから,それを遮って話しかけることは,かえって迷惑になるとも考えていたため,いずれにしても,Kに話しかけるつもりは全くなかったのである(第6回公判被告人調書p53,第8回公判被告人調書p12~13,第9回公判被告人調書p16)。

 このような状況を客観的に見れば,全く話しかけるつもりが無かった被告人に,原判決のいう上記恋愛感情充足目的があったとは,到底言えないことは明らかであり,「待ち伏せ」にはあたらないというべきである。
 
 もし仮に,被告人が,原判決認定の上記目的を持っていたならば,むしろ,判示3の行為の犯行状況として認定された被告人の行動には,以下のとおり不自然かつ不合理な点があり,原判決には,不整合・自己矛盾があるというべきである。

 即ち,原判決が認定した判示3の行為は,被告人が判示3のビル前歩道上においてKが乗っている車が通り過ぎるのを目で追うように見ていた行為のほか,その後,Kらが判示1のパーキングに車をとめ,さわだビルに戻るように歩いてくると,被告人がさわだビルの角に移動し,ビルの影からKの方を振り向き,再び,ビルの影に隠れるような動作をし,Kがさわだ<27頁>
ビルの入口の辺りに着くと,被告人は同ビルと反対側の歩道上に移動して,その後,Kがビルの中に入ると,ビルから離れるように歩いて行ったという行為である。

 被告人が,もし仮に,当時,原判決認定の目的,すなわち,機会があれば,Kと話をするなどしてKと会ってKとの関係を修復したいと考えていたのであれば,Kがさわだビルの方に向かって歩いて来るときに,話しかけたはずであり,また,そのとき話しかけられなかったとしても,Kらが山口弁護士の事務所での打ち合わせが終わるまで,さわだビル周辺で待機するなどして,Kがビルから出てきたところを見計らって話しかけるのが,自然かつ合理的な行動である。

 しかるに,実際には,原判決も認定したとおり,Kに話しかける機会が何度もあることを認識していたのに,その機会を利用せず,むしろKが被告人の方に向かって歩いてくると,被告人はさわだビルの反対側の歩道上に移動して,Kに見つからないように隠れる行動すらとっており,さらに,Kがビルの中に入ると,その後Kが出てくるのを待たずに,その場を離れるという行動をとったのであり,原判決の認定した「機会があれば,工藤と話をするなどしてKと会ってKとの関係を修復したいという」目的を持った者の行動としては,極めて不自然かつ不合理な行動である。

 特に,判示3のときまで約2年半もの間,被告人はKと連絡がとれず,居場所も分からず会うこともできなかったという経緯に照らすならば,被告人に,もし仮に,前記判決認定の目的があったならば,前記のようにKと話をするまたとない機会でありながら,Kに一言も話しかけず,むしろ身を隠すような行動に終始することは,到底考えられないことである。
 

 (5) 判示4の行為当時の被告人の認識

 被告人は,判示4のとき,Kが来るかもしれないという認識をもって■■方敷地内で待ち伏せしていたのではない。

 被告人は,既に述べた通り,判示3の頃までには,父親の車の移動経路のパターンを把握し,Kの居場所は荻窪周辺にあるだろうという推測はしていたが,その居場所を特定するにはまだ至っていなかったところ,判示4の日の朝,GPSの発信情報により,父の車が相模原の実家を出発したことが分かり,その後いつもどおり,荻窪に向かっていることを知り,Kの父親の車が,荻窪のどのアパートやマンションに停まるのか確認したいと考えたため,自らもバイクで荻窪に向かったのである。
 
 この日に先立ち,被告人は,荻窪において,GPS記録が,1回の機会に短時間で連続してとれた住宅街の路地に注目していたのであり(第6回被告人調書p54,同調書の添付資料3の斜線部分),その周辺にK氏の居場所があると思い,具体的に3カ所のアパート・マンションをKの居場所候補に挙げ<28頁>
ていた(第6回公判被告人調書の添付資料3の○を付けた3箇所)ので,判示4のときにも,Kの父親の車は,その路地に来るだろうと予想して,その路地から少し離れた近所にバイクを止め,大通りを歩いて前記路地に向かった(乙11・原審記録1374丁,第6回公判被告人調書54頁,第8回公判被告人調書p15~16)。

 ここで,重要なことは,被告人は,前記路地に向かったときには,その後にKの居場所とわかったフソウハイツについては,Kの居場所としての候補には全く挙げておらず,当時の被告人の認識の中では,全く注目していないマンションだったことである。

 被告人がフソウハイツに全く注目していなかった理由は,フソウハイツの建物全体の入口は,前記路地沿いには無く,反対の大通り沿いにあったため(第6回公判被告人調書p56,同調書の添付資料3の×の表示箇所),前記路地から入ることはないだろうと思っていたからである。

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左は表通り(旧環八通り)、右は裏の小道から見たフソウハイツ

 被告人の歩いていた大通りと前記路地は,人一人分程の幅しかない狭い道でつながっていたところ,被告人は,歩いていた大通りから前記路地につながる狭い道の向こう側の前記路地に,父親の車が停まり,車からKとその母親らしき人が降りるのが見えた。このときの被告人の位置は,被告人第6回公判調書の添付資料3の①であり,父親の車が停まっていた位置は,四角で塗りつぶした表示である(第6回公判被告人調書p56)。

 その後,被告人は,Kと母親が,被告人が居場所候補に挙げていたアパート・マンションのいずれかに行くだろうと思い,前記大通りに立っている被告人の目から見て左右いずれかの方向に行くものと予測し,Kらがどの建物に入っていくかを見るため,前記狭い道に入り,前記添付資料3の②の位置まで歩いていった(第6回公判被告人調書p57)。

 ところが,Kらは,被告人が予測した前記左右の方向へは行かず,意外にも被告人のいる狭い道の方に入ってきたので,被告人は,慌てて,見つからないように,前記添付資料3の③(■■方の建物の塀の奥)の位置に入り込み,隠れた(乙11・原審記録1375丁,第6回公判被告人調書p57,p59~60,第8回公判被告人調書p17~18)。

 実は,フソウハイツには,狭い道の方から入る裏口があったのであり,Kらは,前記②の位置まで来て,フソウハイツの裏口(前記添付資料3の◎の位置)に入っていった(被告人第6回58頁)。

 一方,被告人は,Kらが,被告人のいる■■方の塀の前を通りすぎたので,Kらがどこに入っていくのかを確認するために,再び,前記■■方の塀のところまで戻り,隙間から顔を出して覗いたところ,K氏が向かい側のフソウハイツ荻窪の裏口に入っていく姿が見えたが,そのとき,被告人が草を踏み,「カサカサ」という音を出してしまった。

 その音を聞いたK氏が,被告人の方に顔を向けようとしたので,被告人は,とっさに再度,前記<29頁>
■■方の塀の奥の方に半分ぐらい戻って隠れたつもりであり(被告人第6回60頁,同第8回20頁),Kと目は合っていないし,Kには気づかれていないだろうと思っていた(乙11・原審記録1375丁,被告人第6回p60頁,第8回公判被告人調書p20)。そして,Kが,フソウハイツの中に入った後,前記■■方の塀から出て,表の大通りの方へ行ったのである。

 以上の被告人の供述は,捜査段階から終始一貫しており,かつ,原審公判廷における反対尋問に対しても,極めて具体的かつ詳細に,当時の状況を述べているため,その信用性は極めて高いというべきである。

 以上のとおり,被告人は,最初からKらがフソウハイツまたは前記添付資料3の②の方向に入ってくることを予想して,前記添付資料3の③の位置で予め隠れて待っていたのではなく,予想外に,K氏らが被告人の方に向かってきたため,とっさに見つからないように隠れた場所が,たまたま前記③の場所だったのであり,しかも,その結果,同場所においてKを目撃するに至ったに過ぎない。

 また,このとき,被告人は,Kの居場所を探すことだけを考えていたところ,予想外に至近距離にKを目撃したことに動揺し,Kに話しかける心の準備は全くなかった。さらに,被告人がとっさに隠れた場所は,第6回公判被告人調書の添付写真9に写っているとおり(被告人公判第6回60頁),他人の敷地内であり,一般的に立ち話などするには不適切と思われたことから,Kに話しかけることは全く考えていなかった(被告人公判第6回59頁)。

 以上のような被告人の認識と状況からすれば,判示4のときの被告人には,原判決認定のような「機会があれば,Kと話をするなどして,Kと会いたい,Kとの関係を修復したい」などという気持ちを持てる状況になく,上記恋愛感情充足目的などなかったことは明らかである。

よって,被告人は,判示4のとき野村方敷地内においてKを待ち伏せしたとは言えないというべきである。

② もし仮に,被告人が,原判決認定の上記目的を持っていたならば,むしろ,判示4の行為の犯行状況として認定された被告人の行動には,以下のとおり不自然かつ不合理な点があり,原判決には,不整合・自己矛盾があるというべきである。
 
 すなわち,原判決が認定した判示4の行為は,停車した車からKとその母親が降りるのを確認した被告人が,被告人のいた通路を被告人の方に向かってきたため,通路の脇にあった判示4の■■方敷地内に身を隠したところ,Kが,その前を通り過ぎて,通路沿いのマンションに向かい,入口の前で鍵が開くのを待っていると,1.1メートルほどの通路を挟んだブロックの隙間から,被告人が身を乗り出すようにしてKの方を見ていたという行為<30頁>
である。

 被告人が,もし仮に,当時,原判決認定の目的,すなわち,機会があれば,Kと話をするなどしてKと会ってKとの関係を修復したいと考えていたのであれば,被告人は,判示4の場所において,Kがマンションの入口の前で待っているのを見たときに,すぐさまKに話しかけるというのが自然かつ合理的な行動である。

 しかし,原判決の認定する事実は,Kがマンションの入口で待っている間,被告人は,ブロック塀の影に隠れていたか,または,身を乗り出すようにしてK藤を見ていたというだけということになり,さらには,Kがマンションに入ると,すぐに隠れていた判示4の■■方を出て,その場を離れたのであり,話しかけるような態度は,全く見せなかったのであるから,原判決のいう上記恋愛感情充足目的を持った者の行動としては,極めて不自然かつ不合理な行動である。 
 

(6) 判示5前段の出入口付近における行為当時の被告人の認識

 被告人は,判示4のときに漸くKの居場所を特定できたものの,次の段階としていたKの本心を確認する良い方法を考えつかず,悩んでおり,判示5の日,バイクで練馬教会に行ったついでに,なんとなく,判明したKの居場所(フソウハイツ荻窪)が気になり,行ってみたくなった。

 被告人が同所に着くと,ちょうど,そこに習志野ナンバーの車(トヨタパッソ)が出発しようとするところで,同車にKとは容姿の異なる知らない女性が乗り込むのを見た(第6回公判被告人調書p61,第8回公判被告人調書p23~24)。

 この時,被告人は,その車にKが乗りこむところを見ておらず,また,既に暗くなっていたので,Kが車に乗って外出するとは思わなかった(乙12・原審記録1378丁,第6回公判被告人調書p62,第8回公判被告人調書p25)。

 被告人は,判示4の後,判示5の日までの間に,別途1度だけ判明したKの居場所に行ったことがあり,そのときも,同所に前記習志野ナンバーの車が停まっているのを見て(乙12・原審記録1378丁,第8回公判被告人調書p23),脱会支援者の車なのかどうか関心を持っていた。

 判示5の日は,その車に乗り込んだ女性を目撃したことで,Kの脱会支援者の一人なのだろうか,日が暮れたので,習志野方面かどこかに帰るのだろうか,と関心が膨らみ,脱会支援者と思われる人物が,どのような人で,どこに行くのか,Kに限らず他の拉致監禁事件で苦しんでいる人のために何か役に立つ情報が得られるかもしれないという思いで,その車の後をつけることにした(第6回公判被告人調書p62,第8回公判被告人調書p25)。

 すると,その車は,被告人の予想に反し,Kの居場所の近隣にある宮村<31頁>
宅の前に停まった。が,このとき,被告人は,宮村宅前で,誰が車に乗り降りしたかは,全く見ることができなかった(乙12・原審記録1378~1379丁)ので,被告人は,車に誰が乗っているのか,ますます関心が膨らみ,さらに同車の後を追跡したのである。

 結局,同車は,判示5のラドン・サウナセンターの駐車場に入った。そこは,被告人が初めて来た場所であり(第8回公判被告人調書p26),被告人は,車に誰が乗っていたのかを確認するため,最初は,サウナセンターの外で待っていたが,誰も来なかった。

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2階にラドンセンターが入っている建物の外観

 そこで,外は寒かったこともあり,サウナセンターの中に入って階段を上り,1度は上まで上がったが,お金を払わないと入りにくい状況だったので,また降りて,階段途中にあった踊り場付近の椅子に座って,車の中に乗っていた支援者と思われる人物が誰なのか,来るのを待って確認することにしたのである(乙12・原審記録1379丁,第6回公判被告人p62,第8回公判被告人26~27頁)。

 以上の内容に関する被告人の供述は,捜査段階から一貫しており,本法廷においても,具体的かつ詳細に,当時の認識及び行動を述べているため,極めて信用性が高いというべきである。

 このように,被告人が前記椅子に座った理由は,前記習志野ナンバーの車に,K氏の脱会を支援した人(支援者)が乗っていると思い,その支援者がどのような人で,またどこに行くのか気になり,追いかけて行った結果,行き着いた場所が,前記サウナセンターであり,その人物の「顔を割るために」,前記椅子に座ったのである(乙12・原審記録1379丁,第8回公判被告人p27)。

2003_0330画像0014 
宇佐美氏が座っていた踊り場の椅子。2階のサウナに行く客は、この前を必ず通る。この椅子に座って待っていることがどうして、身を隠して待つ(=待ち伏せする)ことになるのか。理解不能である。

 以上のとおり,判示5前段の行為時において,被告人は,もともと前記車にK氏が乗っているとは全く思っておらず,しかも,その車がサウナセンターに行くことすら知らず,Kがサウナセンターに来ることを,あらかじめ予想して,判示5前段の出入口付近の椅子に座っていたわけではないのであるから,Kに対する恋愛感情充足目的など持ちようがないのである。よって,原判決のように恋愛感情充足目的をもって,Kを待ち伏せしたと言うことはできない。
 
 もし仮に,被告人が,原判決認定の上記目的を持っていたならば,むしろ,判示5前段の行為の犯行状況として認定された被告人の行動には,以下のとおり不自然かつ不合理な点があり,原判決には,不整合・自己矛盾があるというべきである。

 すなわち,原判決が認定した判示5前段の行為は,判示4の際にKが居住していることを確認したマンション付近において様子をうかがっていたところ,マンション入口に停まっていた車に統一教会の脱会を支援する関係者と思われる女性らが乗り込むのを見たので,その車のあとを尾行し,その<32頁>
車が宮村氏の家の前に止まり,人が乗り降りするのを見かけたことから,さらにその車を尾行し,車が判示5のサウナセンターの駐車場に駐車することを確認した上,先回りして同サウナセンターの出入口付近の階段踊り場で上記関係者らが来るのを待っていたというものである。

 被告人が,もし仮に,当時,判決認定の目的,すなわち,機会があれば,Kと話をするなどしてKと会ってKとの関係を修復したいと考えていたのであれば,Kが居住していることを確認したマンションを訪問した上で,むしろ,支援者と思われる人たちが帰った後を見計らって,Kに会って話をしようと考えるのが自然である。

 ところが,原判決の認定では,被告人は,わざわざ,Kが乗っているとは思っていない車で,かつ,脱会を支援している女性が乗っていることは認識した車を追跡したうえ,その外出先において統一教会の脱会を支援する女性らが一緒にいる前でKと話をしようなどと考えたことになり,極めて不自然な行動である。

 また,原判決は,被告人が前記車に宮村が乗っている可能性も十分に認識していたと認定した上,以前警察を呼ぶ騒ぎを起こしている宮村が一緒かもしれないのに,サウナセンターの階段踊り場に先回りしてそこにあった椅子に座り,公然と上記関係者らを待つというのは不自然であると述べているが,もしそうならば,被告人が,Kと会ってKとの関係を修復したいという目的をもって,以前警察を呼ぶ騒ぎを起こしている宮村が一緒かもしれないのに,サウナセンターの踊り場付近に先回りして公然と待つということは,なおさら考え難く,不自然である。
 

(7) 判示5後段の受付付近における行為当時の被告人の認識


 被告人は,判示5前段のときに,サウナセンターの出入口付近にて予想外にも,宮村と一緒にKが階段を上ってきたので驚いたが,さらに,そのときの宮村とKの二人の様子から,二人が,とても親しい関係にあると感じ,これまでKは偽装脱会をしている可能性が高いと思ってきたが,実は,本心から脱会したのではないかという思いが湧いてきたのである。

 ただ,被告人としては,はっきりとK本人に確認しなければ,真実は分からないと思った(第7回公判被告人調書p34~35)。
 そこで,被告人は,せっかくここでKの姿を見たのだから,Kの意思を確認するチャンスだと思い,また,判示4の時にKの居場所を見つけながらも,なかなか意思確認の方法が見つからず悩んでいたところ(第6回公判被告人調書p61,第7回公判被告人調書p35),サウナという公共施設なら,意思確認にも適していると思い,サウナに入ることにしたのである(乙12・原審記録1380丁,第6回公判被告人調書p63~64)。

 被告人がサウナに入ったところ,サウナに宮村がいたので,先ほどのKと宮村の様子から,まずは宮村に,Kと会わせてほしい旨頼むのが筋で<33頁>
あろうと思い,宮村に話しかけた。
 しかし,宮村は被告人の話を聞こうともせず,全く相手にしなかった。

 そのため,被告人は,これ以上,宮村に頼んでも無駄だと思い,先にサウナを出て,受付付近の椅子に座り,Kが出てくるのを待つことにした(乙12・原審記録1381~1382丁,第6回被告人調書p63,第7回公判被告人調書p35)。

 このとき,被告人が座っていた前記場所は,一般のサウナ客が待ち合わせをする場所であり(第6回公判被告人調書p64),受付には,サウナセンターの番頭がいた(宮村調書p29)。そして,被告人は,この番頭であるサウナセンターの店主に「ここで待たせてほしい。」と述べて,同店主の了解を得た上で待っていたものである(甲7・原審記録1273丁)。
 
 その後しばらくして,Kがサウナから出てきたので,被告人は思い切って,「お久しぶり!」と声をかけた。ところが,Kは,強い口調で感情的に,
「私はすごく傷ついたんだから。」とか
「まだあの団体にいるんでしょう。」
 などと述べ,まともに会話ができる様子ではなかった。

 そのうち,宮村や他の女性がサウナから出てきて,宮村が「110番通報しろ。」と言うと,すかさずKが他の一緒に来た女性から携帯電話を借りて110通報をし始めた(甲7・原審記録1273丁,第6回公判被告人調書p64~66)。

 裁判とは関係のないことだが、Kが携帯電話を借りて110番したという事実は、実に興味深い。
 2010年の秋、宮村の勉強会にやってきた元信者(Kと同じ足立青年支部に所属、自然退会)に、Kが「まだ携帯電話を返してもらっていないのよ」とこぼしたことがあった。
 このことからすると、携帯を借りたのは-持ってくるのを忘れたということも考えられるが-、この時点(2011年11月)においても、いまだ携帯を返してもらっていなかったからではないのか。
 そうであるなら、この段階でも、宮村はKのことを心から信頼していなかったということになる。
 Kさんに聞いてみたい。
「もう携帯は返してもらったのですか」と。

 宮村さんにはこう提案したい。
「もうKさんは監禁派の仲間になったのだから、携帯を返してあげなさい。Kさんが仮に昔の仲間(現役信者)に電話するようなことがあっても、真実はしゃべらない、しゃべることができないからですよ。ゲロすれば、告訴虚偽罪で刑務所行きになるから。


 被告人は,Kが,あまりに感情的に被告人に敵対してきたので,何を話すべきか言葉も出てこなくなり,また,宮村氏の指示に従って110番通報するKの態度を見て,もはや脱会や祝福破棄が本心かどうかについて,改めて意思確認するまでもなく,Kの人格が,以前被告人と交際していた当時とは全く変わってしまったと感じ,とても衝撃を受け,内心
「もうだめだ。Kさんは変わってしまった。」
 と思った。

 そして,Kに意思確認をする必要はないと考え,その場を立ち去った(乙12・原審記録1381~1382丁,第6回公判被告人調書p66~67)。

 以上の内容に関する被告人の供述は,捜査段階から一貫しており,原審公判廷においても,具体的かつ詳細に,当時の認識及び行動を述べているので,極めて信用性が高いというべきである。

 以上のとおり,被告人がKを待っていた場所は,前記のとおり,本来,一般の客が待ち合わせに使う場所であり,しかも,K自身が作成した甲7の書面に記載されたとおり,被告人は,サウナセンターの店主に「ここで待たせてほしい。」旨述べ,店主の了解を得た上で,ただ待っていたにすぎない。

 このような開かれた場所において,かつ当該場所の管理権者である店主の了解を得た上で待つ行為は,文字通り,単に「待っていた」というだけに過ぎず,ストーカー規制法の「待ち伏せ」にはあたらないというべきである。 

 
 もし仮に,被告人が,原判決認定の上記目的を持っていたならば,むしろ,判示5の後段の行為の犯行状況として認定された被告人の行動には,以下の<34頁>
とおり不自然かつ不合理な点があり,原判決には,不整合・自己矛盾があるというべきである。

  即ち,原判決は,判示5の後段については,サウナセンター受付付近における待ち伏せを認定した行為と関連しては,Kがサウナから帰ろうとすると,被告人が受付のすぐ近くにある椅子に座っており,Kに対して話しかけたが,その際,被告人はKに対して,2008年からずっとKを探していた,これで終わりにするなどと言った行為を認定した。

 被告人が,もし仮に,当時,原判決認定の目的,すなわち,機会があれば,Kと話をするなどしてKと会ってKとの関係を修復したいと考えていたのであれば,Kに対し,自らの気持ちを伝えるなどして関係を修復しようとする言動を述べたはずである。

 しかし,事実は,前記原判決のとおり,被告人の口からは,一言も,Kとの関係の修復をしたいという言葉はなく,むしろ反対に,「これで終わりにする」との言葉を述べ,Kとの関係を終わらせる言動を述べたのであり,判決が認定した
「機会があれば,Kと話をするなどしてKと会ってKとの関係を修復したいという」目的
を持った者の行動としては,極めて不自然かつ不合理な行動である。


 (8) 被告人の認識の認定に関する原判決の誤り
 
 原判決は,弁護人が判示1,2及び4の行為の際は,被告人は,Kが来る又は来るかもしれないと認識もしくは予想していないから,ストーカー規制法の待ち伏せ行為に当たらないと主張したことに対し,

「被告人は,Kの父親の立ち回り先にKが所在すると考え,Kの父親の車が所在するであろう判示各場所に出かけて様子をうかがうなどし,実際にもKは被告人の姿を見ているのであるから,被告人には判示各場所にKが所在し,あるいは,来るかもしれないという認識があったと認めることができる」
 として,いずれも待ち伏せ行為に当たるとした。 しかし,

「実際にKが被告人の姿を見ている」
というK側の事実から,何故,
「Kが所在し,あるいは,Kが来るかもしれない」
 という被告人の認識を肯定することができるのか,上記原判決の認定は,論理的に飛躍があり,経験則に鑑みても成り立たないというべきである。

 被告人にとって,父親の車の立ち回り先や所在場所は,Kの居場所を推測するための手がかりに過ぎず,車の中や車の所在する場所について,即,Kが所在するとかKが来るかもしれない場所と認識していたわけではない。

 GPSによる情報自体は,約50mも誤差のある情報であり,その情報も,あくまでKの父親の車の位置情報であるから,Kとは無関係の父親自身の個人的な車の利用の可能性もあったはずである。

 また,常に,父の車の所在場所と,判示各場所が一致しているわけでもない。それどころか,判示2や3において,被告人は,<35頁>
父親の車の存在すら認識していなかった。
 
 よって,原判決の上記事実認定は,明らかに事実誤認である。

 とすれば,判示1,2,4の行為のとき,被告人には,判示各場所にKが所在し,あるいは来るかもしれないという認識があったとは認められず,Kが居るとも来るとも認識していない被告人が,Kに対する恋愛感情を充足させる目的を持つこともありえず,ストーカー規制法上の待ち伏せには当たらないというべきである。
 

 (9) 方法について

 原判決は,被告人がKの父親の車にGPSを取り付けて,これから発信される位置情報をもとにKの居場所を捜していたという方法について,Kの行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる方法であると認定する。
 
 しかし,被告人が利用したGPSには,約50mの誤差があり,ピンポイントで父親の車の位置がわかるほど精度の高いものではないうえ,あくまで父親の車の位置情報を取得していたのであって,K本人の位置情報を入手していたのではない。

 よって,客観的に,Kの行動の自由を著しく害する方法とはいえない。

 また,KがGPSの存在を知ったのは,判示4の行為の直後であり,発見と同時にそのGPSを取り外したのであるから,被告人のGPSによる方法によって,実際には,行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような状況には無かったと言える。

 以上より,方法に関する原判決の上記認定には,事実誤認がある。
 
 さらに,判示4の後,工藤の父親が宮村の指示でGPSを捜して発見し,取り外したのであるから,被告人は,判示5のときは,GPSによる方法は用いていない。ところが,原判決は,判示1から5まで一括して,GPSによる方法で行ったかの認定をしており,事実誤認がある。

 宇佐美氏側の主張・供述・証拠をことごとく無視している点で、福士判決文は偏頗(へんぱ)性に満ち満ちているが、そればかりではなく、事実認定のそもそもがいい加減であるということだ。判示5の段階ではGPSが取り外されていたことは、検察の起訴状でも論告でも、明らかにされていることだ。
 判示4の段階で、K側がGPSを発見したからこそ、告訴につながったんだから。
 福士裁判官は判示1~判示5の事実関係、また事件の全体像が頭に入っていなかった。それゆえ、こんな恥ずかしいミスを犯したのだろう。


(宇佐美隆さんの近影 写真提供:『週刊実話』)

 控訴審の公判が終ってから、宇佐美氏と食事をしたのだが、温厚な彼が水の入ったガラスコップをテーブルに叩きつけ、憤然とこう語ったのが印象的だった。
「高給をもらっているんでしょっ!許せないですよ」
 怒った宇佐美氏の姿を見たのは、このときが初めてであった。

-続く-
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コメント

不誠実

福士裁判官には、初めから真実を探し出して正しい判決を下そうという気持ちは全く無く、いかにして検察の機嫌をとって点数を稼ぐかということしか考えてなかったように思います。全く不誠実であり、このような人がこのまま続けて裁判官をやるというのは非常に不安です。これからも検察様のためならば、一般市民の人生など全く省みないでどんどん冤罪を作り出していくでしょう。
このような、不誠実な裁判官、また嘘つき弁護士は何とか探し出してリストでも作って、公表することは出来ないものかと思います。

“宮村教”

<Kがサウナから出てきたので,被告人は思い切って,「お久しぶり!」と声をかけた。ところが,Kは,強い口調で感情的に,「私はすごく傷ついたんだから。」とか「まだあの団体にいるんでしょう。」 などと述べ,まともに会話ができる様子ではなかった。
 そのうち,宮村や他の女性がサウナから出てきて,宮村が「110番通報しろ。」と言うと,すかさずKが他の一緒に来た女性から携帯電話を借りて110通報をし始めた>

それにしても、Kの態度、何なんでしょうかねぇ~。
勝手に行方をくらまして、一方的に婚約を破棄(しかも文書のみ)しておいて…。

わざわざ会いに来てくれたんだから、一言「あの時はごめんなさい」があってしかるべきでしょ。

宮村の指示で110番通報!?
何かに取り憑かれているとしか思えません。

宇佐美さんには同情を禁じ得ません。

ここまで思想改造するとは、“宮村教”、いや監禁棄教、恐るべし!

ストレスと記憶

 多分、監禁中にまたその後のリハビリ中に、蓄積された心的ストレスがK氏の脳へのストレスになったと私は考えます。
「大脳皮質と扁桃核とが十分に機能していて初めて、好きなことがあり、楽しいという体験が出来るのだろう。」心の休ませ方p100(加藤諦三著)より

 宇佐美氏とのかつての楽しかった交流の記憶が思い出せなくなった。そしてその原因は、K氏の脳のストレスによるものではないかと私は思います。 だからサウナで会った時のK氏のよそよそしさや、裁判では宇佐美氏をあたかも知らない他人のように、K氏は見ることが出来るのだと思います。

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