マスコミ志望の学生に拙著が紹介されていた 

書評・感想(10)

進路図鑑に『我らの不快な隣人』の書評が!


 知人から「『大学進学・就活/進路図鑑2010』に、拙著の書評が載っている」と聞き、記事を郵送してもらいました。筆者は、ベストセラー『就活のバカヤロー』で有名になったジャーナリストの石渡 嶺司氏である。

 このムック本が発売されたのは09年の春のため今さら、(またあまりにも私のことを褒めていることもあって)、紹介するのは気が引けるが、カルトや反カルトとはまったく関わりのない石渡氏がマスコミ志望の学生たちにどのように伝えているのか。興味深いと思われるだろうから、全文紹介しておく。ゴチックを含め原文ママ 

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『我らの不快な隣人』(米本和広、情報センター出版局)の著者は、カルト宗教批判の本をこれまで刊行してきたジャーナリストである。

ヤマギシ会の実態を暴露した『洗脳の楽園 ヤマギシ会という悲劇』(洋泉社/2007年に新装版を情報センター出版局から刊行)、ヤマギシ会や統一教会、オウム真理教などカルト宗教の信者の子どもに焦点を当てた『カルトの子』(文春文庫)などはかなり評価された。

 さて、著者の本はこれまでの二元論でいえば「反カルト」である。当然ながら反カルト運動の弁護士や関係者は高く評価している。では、ここで紹介した『我らの不快な隣人』は反カルトなのだろうか?

 本書は、献金を強要するなどしてマスコミや社会から相当バッシングを受けた統一教会とその信者、その家族たちを取り上げたルポ。サブタイトルには<統一教会から「救出」されたある女性信者の悲劇>とある。

 統一教会から「救出」された?
 これまでの筆者の立場を考えれば「統一教会に拉致された」であるはず、なぜその逆なのか?

<引用者注=統一教会諸兄諸姉は、この一文にピンとこないだろうが、一般の人々が「統一教会」と「拉致監禁」という2つの用語から咄嗟に連想するのは、「統一教会が市民を拉致監禁した」ということである。大いに考えてもらいたい>

 実は同書は、反カルト運動、反統一教会の関係者による拉致監禁事件をまとめたルポである。「統一教会の信者が拉致する」のではなく、「統一教会の信者を、拉致する」のだ。拉致の理由は“脱会を説得するため”だ。
 信者の家族が、反カルト運動のキリスト教牧師の指導によって、(家族である信者に対し)脱会するよう説得することは知っていた。
 だが、その説得が拉致監禁によるものであることは誰も知らなかった。その実態を明らかにした力強いノンフィクションである。

 私が同書をマスコミ志望の高校生・大学生に勧めるのはノンフィクションの好著だからではない。
 ジャーナリストとしての苦しみがよくわかるからだ。あとがきでも、
「反カルトの諸兄と交流を重ねてきた。そういう人たちを批判しなければならないのは、精神的にきつい作業だった」
 と告白している。

 しかし、著者である米本氏はその苦しみを乗り越え、本を出した。反カルト運動の関係者は怒り心頭、人によっては怨み骨髄に違いない。
 この米本氏の姿勢こそ、ジャーナリズムを体現している。もし、交流を重ねた人や団体を批判できなければ、それはジャーナリズムを放棄したのも同然である。

 無批判に賞賛するようになれば、それをジャーナリズムからコマーシャリズムに宗旨替えしたことを意味する。米本氏はジャーナリズムの立場を固守した。それでも私は米本氏の後を追えるのだろうか。もちろん、ジャーナリストを自称する以上は後を追って当然である。しかし、ときにそれが本当にできるのかどうか、不安になることを正直に告白したい。

 マスコミを志望する高校生・大学生は、出発点は「なんか格好よさそう」「面白そう」程度だと思う。それはそれで別に構わない。
 しかし、ジャーナリズムの道に入るとき、どこかで米本氏と同じ苦しみを味わうことになる。その苦しみがいかばかりか、それを知るうえでも、統一教会の是非とは無関係にお勧めしたい。
 


?若干の感想?

 私の心中を察してくれた書評は初めてである。
 この一文を読んで、あらためて原稿を書いている最中の、とまどいや葛藤の気分が蘇ってきた。
「この本が出たら、反統一教会陣営の知人たちはどんな反応をするのだろうか」
 かなりのリアクションは予想していたが、石渡氏が予測した「人によっては恨み骨髄に(なるに)違いない」とまでは思ってもみなかった。
 実際、私のことを「カルトごろつき」「バランスを欠くライター」(行田教会牧師の清水氏の言葉)、「変調ライター」(国会議員の有田氏の言葉)とレッテルを張るほどに、恨み骨髄になったようである。

 とまどいや葛藤の気分が生まれたとき、こんな事実を知ったら私は書くのか書かないのか、自問自答した。
 それは、公害反対運動(絶対正義)の中で、不正なことが行なわれていることを知った場合である。不正なこととは、たとえば反対活動家がカンパで募った資金をみんなで私的に流用していたとか、活動家内部で意見が分かれ、意見が異なる活動家を一室に閉じ込めて考え方を変えさせようとしたとか、そんなことである。
 もし、その事実を暴露すれば、地域住民からの圧倒的な支持を受けた公害反対運動に水をさすことになる。記者として書くべきか書くべきでないか。書いた場合、私はどのように言われるのだろうか。

 
 とまどったあと、再び、パソコンに向って記事を書きはじめたときの気分は、「正義の中に不正義あり」「善の中に悪あり」。どんなに正義だろうが、その中に不正があることを知った場合、書くべきではないか?というものだった。 (もっともこんなにすっきりしたものではなく、何度も、逡巡したけど)
 若かりし頃には反発した、近江絹糸(おうみけんし)の労働争議に材をとった三島由紀夫の『絹と明察』がとても参考になった。

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コメント

やっと分かりました。

米本さん

>「反カルトの諸兄と交流を重ねてきた。そういう人たちを批判しなければならないのは、精神的にきつい作業だった」

やっと分かりました。拉致監禁には厳しく対処しながら、統一教会員には、拉致監禁の原因となっている統一教会の伝道方式や献金方式に反対ののろしを上げよと説かれるのは、まさに米本さん自身が「反カルト諸兄」と交流しながら、他方でそういう人たちを批判しなければならない、「精神的にきつい作業」をしてきた実績があるからですね。

統一教会員としても、見習わないと。

ジャーナリズム

「我らの不快な隣人」を読んだ時、自分自身の視界が一気に開けた感を持ちました。それは、真のジャーナリズムの持つ力だと、改めて思います。

もともと米本さんは反カルトの立場ですから、当然 統一教会に対する攻撃もありますが、私は批判を甘んじて受けとめ改革していくことが統一教会の生きる道と思っています。
今後も、遠慮なくご批判下さい。

謙遜なさることはありません

<この米本氏の姿勢こそ、ジャーナリズムを体現している。もし、交流を重ねた人や団体を批判できなければ、それはジャーナリズムを放棄したのも同然である>(石渡氏の書評より)

米本さんの本を紹介された石渡嶺司氏、および、それを掲載した『大学進学・就活/進路図鑑2010』の発行元に心から敬意を表します。

ただ、米本さんは謙遜なさることはないと思います。石渡氏の評価は決して過剰でもないし、至極当然な評価だと思いますので。

でも、新刊とは言えない本をあえて取り上げてまで、ジャーナリズムのあり方を訴えられた石渡氏は正直、すごいと思います。尊敬です。

私が、米本さんこそ真のジャーナリストだと思うのは「交流を重ねた人や団体を批判している」ことのみならず、メディア界に影響力を持つ巨大なネットワークを敵に回してまで、あえて真実を書かれたことがすごい、と思うからです。

私は統一教会を擁護するような発言をしたことで、痛い目にあったコメンテーターや識者を何人も知っています。それほどまで、この問題はタブーになっています(そうなるように工作されています)。

それを勇気を出して書かれたわけですし、今も尚、圧力に屈せず、真実を書き続けていらっしゃるのですから、本当にすごいと思います。

それにしても、書評が出て、本当に良かったですね。改めてお喜び申し上げます。

はじめまして

はじめまして。『進路図鑑2010』著者の石渡です。偶然、こちらでご紹介いただいたことを知りました。ありがとうございます。
 米本さんの『洗脳の楽園』は学生時代に拝読しました。以来、米本さんに近づいているかどうか自問自答しながら現在に至っております。
 恥ずかしながら米本さんがブログを開設されていたことを知らず、こうしてご紹介いただいて、嬉しく思い、投稿させていただきました。今後ともよろしくお願いします。

Re: はじめまして:石渡さんへ

 石渡さん、はじめまして。話題の『就活のバカヤロ-』の著者から投稿いただき、こちらこそ、嬉しい限りです。

 記事には書きませんでしたが、うちの子どもも『就活のバカヤロー』を読んでいました。

 就活文化問題の影響は深刻だと最近感じています。
 なぜなら、就職時の一過性に限らず、その後の若者の心性、そして社会全体にも影響を及ぼしていると感じるからです。
 深刻なのは、就活文化が社会の標準化(異質物の排除=このブログのテーマとも関係する)と、創造力の削ぎ落としをもたらしていることにあります。

 読者としてのお願いは、就活問題を、縦軸(時代)また横軸(グローバル=アメリカ・中国・韓国・イスラムなど)で、これからも追及してもらいたいということです。

 期待しています。どうか、さらなるご活躍を!

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