解放された孝成教会のHMの体験(1)
拉致監禁リアル情報(15)
解放された孝成教会のHMさん(29)の体験(1)
2010年8月13日
前夜に雨が降ったためか、暑さはいくらか和いでいたが、それでも気温は30度を超える蒸し暑い1日だった。
8月13日(金)のことである。
深雪(29、HMあるいはMとかのイニシャル表記は読みにくいので、仮名にした)が横浜の実家に着いたのは、夜の7時頃だった。
いつになく緊張した面持ちの両親から「話がある」と言われ、向き合って座ることになった。
「深雪に、このまま信仰の道を行かせたくない。親子で話し合いたい」と切り出した両親は、続けて、こう話した。
「川崎にマンションを借りた。そこで心ゆくまで話し合おう」
深雪はすかさず、「毎週、ここに戻っているんだから、ここで話せばいいじゃないの」と抵抗すると、「統一教会の人が来るから、家では話し合えない」
これまでの監禁の記憶が蘇り、<また同じことをされるのか>。深雪は危機感を覚え、咄嗟に窓から逃げようとした。両親が後ろから捕まえ、中に引き込もうとする。外に向かって、叫んだ。
「助けて!誰か来て! 助けて!誰か来て!」
いつの間に外に出たのか、姉夫婦が窓の外から顔を出し、窓を閉めてしまった。
家に引き込まれた深雪の興奮状態は治まらなかった。
そんなとき、警察官がやってきた。近所の人が通報したのだろう。
深雪は懇願した。
「私は過去に家族から2度監禁された経歴があります。そのときに精神的にひどく追い込まれました。監禁は法に触れる行為です。今回も前と同じ状況になるかもしれません。なんとか、家族を説得して、私を自由の身に戻すようにしてもらえませんか」
制服姿の警察官は、深雪にとって“希望”そのものだった。
しかし、警察官はこういうばかりだった。
「家庭内のことですから、ご家族でよく話し合ってください。あなたも自分の意見ばかり主張しないで、親御さんの言い分をよく受けとめ、また親御さんも娘さんの意見をよく聞いて、静かに話し合ってください。家庭内のことなので、警察は事件として介入することはできません」
深雪は、去っていく警察官の後ろ姿に向かって、繰り返し叫んだ。
「見捨てないでください。見捨てないでください」
希望は一転して絶望に。
興奮状態の深雪を、そのまま丸ごと受け入れるかのように、両親、姉夫婦、親戚、父親の友人は冷静な表情で見つめ、「深雪の信仰を理解したい」と両親が話しかけてきた。1人で取り乱してばかりいてもしょうがないと思った深雪は、「しっかり向き合って、信仰を理解してもらおう」と気分を変え、「私は逃げない」と宣言して、自分から車に乗り込んだ。
?若干の補足説明?
これが8月13日、孝成教会のHMさんが拉致監禁された当日の模様である。これまでの監禁事件については「監禁リアル情報(11)」を読んでもらいたい。なお、深雪さんにこの記事をチェックしてもらったところ、若干の事実誤認と私の推測に間違いがあることがわかったので、訂正した。
偽装脱会によって2回目の監禁から解放されて以降(2008年8月以降)のことを書いておく。
「これからは良心に従って生きていく」と宣言した深雪は、川崎のアパートで一人暮らしをすることになった。両親はそのことを認め、賃貸契約をする際の保証人になった。
当初は看護師の資格を取るために、看護学校に通うようになったが、親からの学資金を出してもらうことにわだかまりを覚え、看護学校を中退し、会社に就職することにした。
アパート暮しを始めてから、毎週、実家には顔を出していた。
統一教会の信仰を続けていることを両親に黙っているのは良くないと思った深雪は、そのことを正直に告げた。
両親の表情は「がっくりとやっぱりかが混ざったような感じ」だったという。
今回の監禁までの2年間、毎週のように実家に顔を出していたが、両親は統一教会をやめろとも、統一教会の問題点を問い詰めることもなかった。
祝福を受けたいと伝えたときも、反対も賛成もしなかった。
祝福は、鮮文(そんむん)大学で行われた2009年10月14日の式典に参加した。マッチングの相手は荒川青年支部のK(30)だった。
深雪は、マッチングのことを報告し、両親に写真を見せたが、さしたる反応を示さなかった。????????????
2回も監禁された経験があるにもかかわらず、深雪さんはなぜ毎週、実家に戻っていたのか。
彼女が話す。
「2回の監禁によって、歯車の狂いかけていた親子の関係を、もう1度、信頼に基づいた関係にしようと思ったからです。それで、信仰を続けていると明かしてからは、統一教会のことをよく話すようにしていました。
少しは話題に乗ってくれ、父とは神について話したこともありましたが、私が話してもだいたいが『心、ここにあらず』といった態度でした。『思っていることがあったら、本音で語って欲しい』と願っていましたが」
日常的な話題は、なんのまだかまりもなく、昔の仲良し親子のように会話できたが、統一教会の話題になると「心、ここにあらず」となる。
深雪は“反牧”につながっていないか何度も確かめたが、両親は川崎牧師とも千歳の長倉氏(別名・谷口)ともつながっていないという。それで、深雪は安心して毎週、実家に帰っていた。
(統一教会用語の「反牧」を直訳すれば、統一教会に反対する牧師ということになるが、正しくは「強制説得を行っている牧師」のことである)
毎週、実家に戻り、本音を語りかけてくる。そんな娘はこの世にそう多くはない。むしろ稀有な存在と言っていいだろう。私にも深雪さんと同じ年頃の娘がいる。私が深雪さんの父親なら、統一教会の資料を読破し、娘の話をよく聞き、疑問点をぶつけるだろう。それで、娘が統一教会をやめることがないにしても、娘の統一教会での活動、統一教会の実態を知ることができる。「娘の今」を理解することができるのだ。
どんなに熱心な信者であっても、必ず、組織への疑問を1つや2つは心に抱えている。それをすべて受け入れる態度で聞いていけば、やめる・やめないはともかく、組織よりも、親への信頼感のほうが強くなる。
だから、深雪さんの親は、毎週実家に戻るようになったこの2年間、いったい、何をしていたのかと、ついため息が出てしまう。
おそらく、“反牧”の「統一教会に反対するようなことは言わないほうがいい。警戒心を抱かせないようにしなければならない」というバカとしか言いようがないワンパターン指導に忠実に従っていたのだろう。
これについては、このあとのブログで触れる。
なお、深雪さんはある地方の国立大学に在籍中、カープ(原理研究会)に入会している。学部は理系。
- [2010/11/12 12:30]
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コメント
深雪さんお疲れ様でした。
やはり親は、”外注”を決断すると、なるべく子供を説得業者に引き渡すチャンスを失わないように波風立てず、本音の話し合いができなくなるみたいですね。
私の時もそうでしたが、全国的にマニュアル化されているのでしょうか?
今後の記事で書いてくださるようなので、期待しています。
それにしても、二回も監禁された経験がありながら、普通なら怖くて家にも帰れなくなってしまいそうなのに、毎週家に帰っていたなんてえらいと思います。
最前線
アメリカでデモが予定され、拉致監禁に対する抗議運動が徐々に広まっているようですが、この度、アップされた深雪さんの体験談は、最新の、最先端の情報ですね。
拉致監禁という、どんな小説にも勝る奇なる現実。これに関する情報の中で、この物語こそ最前線のニュースだと思います。なにしろ、ついこの間まで監禁されていた当事者なのですから。
警察や検察をはじめ、為政者の方もこのブログを見ざるを得ませんね。
米本さんによって、繊細かつリアルに描かれるこの話は、読む人の心を突き動かします。
大変な労力がかかるものと拝察いたしますが、どうぞ、日本のため、被害者のために、書き続けてくださいませ。
よろしくお願いします。
Re: 深雪さんお疲れ様でした。
> やはり親は、”外注”を決断すると、なるべく子供を説得業者に引き渡すチャンスを失わないように波風立てず、本音の話し合いができなくなるみたいですね。
> 私の時もそうでしたが、全国的にマニュアル化されているのでしょうか?
文章化されているかどうかはわかりませんが、これまでの拉致監禁は例外なく、それまで統一教会に反対していたのに、反対しなくなった・逆に理解を示すようになった段階で、行われています。なかには家族が教会を見学したり教会きイベントに参加したあとに、拉致監禁が行われています。
脱会説得者たちの勉強会で、家族は繰り返し、ノウハウを叩き込まれるのだと思います。
追記です。
衝撃が大きければ大きいほど、心の傷は深くなる。
このことを脱会説得者や親たちは気づかないし、気づこうともしない。
ここに,脱会の成否とは関係なく、一つの不幸がある。
勿体ない
私も米本さんと同じく2年間深雪さんのご両親は何をしていたのだろう?と思います。普通は、2度の監禁経験があれば、家には帰れないです。私は1度目の監禁後の偽装脱会した時は1年間家には帰りませんでした。電話もなかなかできませんでした。その為、母が病気になったのではないか?と後悔したものです。
だから、深雪さんは偉いです。説得者は「本当に原理が正しいと思うのなら、逃げないで親に正しさを訴えて、伝道すればいい。」と言います。深雪さんはその言葉通り逃げないで、誠実にご両親にぶつかっていったのです。なのに、ご両親が逃げてどうするのですか?逃げることをご両親に指導してどうするのですか?
お金を出して説得者に任せる方が、子供と議論するより楽です。でも、それで親の愛情を示しているつもりでしょうか?子供の将来を考えているつもりでしょうか?
深雪さんは2年間、必死にご両親に統一教会について訴えました。ご両親はそれに応えるべきでした。2度の監禁経験があるなら、ご両親はある程度原理と原理の間違いは知っているはずです。統一教会の疑問点、問題点もある程度は把握しているはずです。その辺りを深雪さんが統一教会について語ってきた時に、ご両親の言葉で話していれば、拉致監禁なしの自由な環境の親子の話し合いができたはずです。一番理想的な形で話し合いができたはずなのに、それを深雪さんの方から提供していたのに、勿体無いです。
拉致監禁する親、反対派につながっている親が全てそうだとは思わないけど、目の前の自分の子供は見ず、言葉を聞かず、反対派のことに心奪われています。これでは、教会の指示ばかり従って、自分の言葉を聞いてくれない、文鮮明の方ばかり向いて親の方をみてくれないと嘆かせている統一教会員と同じです。批難している統一教会と同じことをしているなんて、滑稽すぎます。
反対している信者の家族の方々は、今自分がそういう状態に陥ってないか?もう一度自分を見つめ直して欲しいと思います。
皮肉なものですね
子は立派に育てておいたが、自分は育っていなかったという事なんでしょうか。
これから先、このご両親はどうするおつもりなのでしょう。
まだ反対派の言葉に従い、もう一度拉致監禁に走るつもりなのか、自分達だけで子と、統一教会と向き合うのか。
しかし三度も拉致監禁に走る親を「信じる」ことなどできるでしょうか。
「信頼関係」をズタズタにしたのは誰なのでしょうね?
自宅で叫んでも…の悲劇
ここで検察審査会議決通知書では、民家があるところで夜九時ごろだから、助けを求めれば住民の誰かが対応してくれるはずだ、というようなことがかかれてあります。一見、誰もが納得しそうな文章です。しかし、そういう推測が全く的外れであったことが、深雪さんの以下の記述ではっきりと理解できます。
いつの間に外に出たのか、姉夫婦が窓の外から顔を出し、窓を閉めてしまった。
家に引き込まれた深雪の興奮状態は治まらなかった。
そんなとき、警察官がやってきた。近所の人が通報したのだろう。
深雪は懇願した。
…中略…
しかし、警察官はこういうばかりだった。
「家庭内のことですから、ご家族でよく話し合ってください。あなたも自分の意見ばかり主張しないで、親御さんの言い分をよく受けとめ、また親御さんも娘さんの意見をよく聞いて、静かに話し合ってください。家庭内のことなので、警察は事件として介入することはできません」色付きの文字
何と、こういう事態への対処まで拉致監禁請負人たちは研究し尽くしているのですね。ぞっとしますね。11月も半ばに名なるので、気温自体も寒くなりましたが、こういう文章を読むと、心底ぞっとしてきます。
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