弁護士山口氏のコラムを評す(6)
山口コメント(6)
勝訴の裏側3
前回書いたように、「話し合いは希望して入った」「話し合いは平穏だった」と書いて欲しいという清水牧師の要望を、元信者のKM氏は断わり、事実をありのままに綴った陳述書を弁護士に送った。
彼女が弁護士渡辺博氏に送ったファックス全文を紹介しておく。それを読めば、裁判の裏側の事情を理解することができるだろう。
KM氏のファックス全文
お久しぶりです。
以前、清水牧師の裁判の件で陳述書をお送りしましたKです。
私は陳述書を全文(100%)使うか、全く使わないかの判断を弁護士さんにおまかせします、という気持ちでFAXしたのですが、昨日小海さんという方[注 裁判を支援する日本基督教団の牧師]から電話がありまして、「一部を削除して使わせて下さい」と言われました。
私は今でも統一協会から脱会できたこと、説得してくれたことに関しては、両親や清水牧師に感謝していますが、保護に至るまでの経緯に関しては、清水牧師も愛澤牧師(一回目の監禁に関わった日本基督教団の牧師)にも問題があったと思っています。
(清水)牧師は「私はそんな指導はしていない」とか「(保護=拉致監禁は)両親が勝手にやったことだ」、「私はあなたには直接暴力的なことはしていないでしょう」と言うのですが、実際に拉致監禁され、物として扱われ、人権を侵害されたことによって深い傷を負い、今でも後遺症として苦しんでいる「迷える子羊」にしてみると、神の言葉を伝えるべき牧師という立場の人間からそんなことを言われたことに対して、どうしようもない憤りを感じます。
(私のような思いを持っている脱会者は何人もいます)
ですから、一部を削除して使うということは私の意に反することですから、小海さんにはその場で「全く使わないで下さい」と伝えましたが、念を押す意味で今日FAXいたしました。
KM
このファックスに、渡辺氏は次のような回答を送っている。
「Kさんの陳述書は、いただいた陳述書の中でも一番具体的でわかりやすく、しかも、この裁判を傍聴していただいた感想まで加えていただき、当職としてはぜひ裁判所に提出したいと思いました。ただ、小海牧師がお願いしたように、一部分、今回の訴訟の証拠としてふさわしくない点がありました。(略)裁判所に提出できない結果となり、申し訳ありません」
渡辺氏が「一番具体的でわかりやすかった」と感じるのは当然のこと。清水牧師の希望に沿うことなく、事実をありのままに書いたからである。
他の一部の脱会者は清水牧師の要望にそって陳述書を書いた。その点、KM氏が削除に同意しなかったのは称賛できる。人として誠実である。
しかし、その代償は大きかった。後日、清水氏から「脱会できたことを感謝していないのか!」と怒りの電話が夜遅く2時間も続き、すっかり体調を崩してしまったからだ。
清水氏は電話口でときに弱気になり、電話口で「陳述書を書いてくれる人はそんなにいないんだ・・」とこぼしたという。
なぜ、脱会者は清水牧師に協力しないのか。
それは、少なからぬ脱会者が、清水氏に感謝しながらも、、「物扱いされ、人権侵害され、深く傷ついたこと」を不快に感じ、事実を曲げてまで陳述書を書きたくないと思った?からだろう。
事実、KM氏もFAX文で「私のような思いを持っている脱会者は何人もいます」と書いている。
山口氏はコラムの中で「すでに確定した判決で、拉致監禁でないことが認定されている」と誇らしげに語る。
しかし、もし、正義の旗を掲げる全国弁連の山口広弁護士・紀藤正樹弁護士・渡辺博弁護士が「第六条 弁護士は、名誉を重んじ、信用を維持するとともに、廉潔を保持し、常に品位を高めるように努める」(弁護士倫理規定)の立場に立ち、裁判の裏側を表に出していたら、どうなっていただろうか・・・。
KMの陳述書を、渡辺弁護士が修正することなく証拠として提出していたら。
前回述べた高須氏の陳述書を、紀藤弁護士が「彼女とは個人的に会ったことがある。そのときに聞いたことと同一だ」と裁判所で真実を明かしていたら。
急に、京都祇園の隠語を思い出した。
祇園では「弁護士」のことを「曲屋」(まげや)と蔑称でいう。粋筋は事実を曲げることを一番嫌う。弁護士は事実を曲げることを生業にしているから、「曲屋」なのだという。
“人権派弁護士”を「曲屋」と表現するつもりはないが、弁護士旧倫理規定第8条を胆に命じてもらいたいことだけは強くお願いしておきたい。
「弁護士は、勝敗にとらわれて真実の発見をゆるがせにしてはならない。」
この項は『我らの不快な隣人』145頁、374頁の注3、389頁の注19を詳述したものです
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弁護士山口氏のコラムを評す(7)「小細工1」へ
- [2009/02/14 15:36]
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コメント
確定申告してました?
ガッテン!
誰にお願いすれば
諸行無常さんへ
日本では、『我らの不快な隣人』8章~10章で書いたように、監禁下での脱会説得しか行なわれてきませんでした。
そのため、強制説得に替わる脱会説得の方法について、論議されてこなかった。
一時期、日本脱カルト協会に期待したことがありますが、ここでも突っ込んだ議論が行なわれた形跡はない。
だから、監禁下での脱会説得を得意とする牧師以外に、頼るところはどこにもないのです。
(信者を何ヶ月間!も監禁して脱会させるなんて、牧師じゃなくたって、誰だってできるでしょう。それを牧師先生とあがめ立てられてきた情況はまさに歪そのものです。
「統一教会員の脱会」レベルではなく、人を監禁することができるなら、共産主義者を反共に、キリスト教徒を仏教徒にだって変えることができる。戦中、特高警察がやったように)
アメリカでは、キリスト教会からも批判され、裁判で大敗訴したディプログラミング(日本でいう保護説得に近い)は姿を消し、それに替わる脱会方法が模索されてきたようです。
直接取材したわけではないので具体的な方法はわかりませんが、スティーブン・ハッサンの近著『マインド・コントロールからの救出』を丁寧に読むと、家族や友人が説得するのがベストと考えているようです。
彼はいろいろ小難しいことを書いていますが、それは簡潔に「家族や友人が説得するのがベスト」と言ってしまえば、彼の収入(彼に脱会カウンセンリグの相談をすると、高額な料金を請求される)に響くからでしょう。
欧米では家族をサポートする人たちがいるようですが、前述したように、残念ながら、日本では一人もいません。
私事になりますが、初めて拉致監禁のことを知って、驚き、山口広弁護士(全国弁連の指導的立場にある弁護士)、滝本太郎弁護士(日本脱カルト協会の事務局長)、川崎経子牧師(『統一協会の素顔』の著者)、杉本誠牧師(山崎浩子さんの脱会説得を行なった人)、浅見定雄教授(ご存知の通り、反カルトのシンボル的存在)など約10人に手紙を出したことがあります。
確か99年頃のこと。しかし、返事は一切ありませんでした。
あれからもう10年が経ちます。
今利理絵さんが提訴してからも10年が経ちます。
この10年間、脱会説得に関する方法は化石状態、凍結されたままです。
知的頽廃というかレベルが低いというか、無残というしかありません。
諸行無常さんがどういう人かはわかりませんが、もし信者家族の方だとすれば、安易に他者に依存せず、ふつうに親子で話し合えばいいのではないでしょうか。
保護説得に対するオルタナティブについては、『我らの不快な隣人』では舌足らずな文章しか書けませんでした。いずれ、このブログできちんと書くつもりです。
最後にお願いがあります。
この欄は「勝訴の裏側」です。
テーマに沿ったコメント(質問も)をしていただければと願う次第です。
諸行無常さんへ
参考になるかどうかはわかりませんが、具体的なアドバイスをすることはできます。みんなの前でやりとりするのは差し障りが出てくると思うので。
自己中心
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