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親は子どもに謝罪すべきか否か?PTSDについて考える?(1) 

保護説得と親子関係(1) 同居を好まず

親は子どもに謝罪すべきか否か(1)

 「高山牧師への質問書」「保護か拉致監禁か」のコメント欄で、秀さんと自主脱会PTSDさん、佐藤さんが、監禁した親は子どもに謝罪すべきかどうかを話題にされていました。
 とても重要で深刻なテーマなので、予定を変更して、急遽、取り上げておくことにします。
 保護か拉致監禁かのテーマとも関係し、続編として読んでいただければ幸いです。

 とりわけ、強制説得に成功した元信者家族失敗した信者家族の方々が読んでくれることを期待しています。

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クリックして眺めると、心が和みますよ。

 最初に投稿の一部を再録する。

<このブログで「両親が謝るべき」との意見が多いのですが、親を親とも思わず忌み嫌っている食口が多いのは問題ありだと思います。ご両親も謝るべき事もあるでしょうが、子も子として心配をかけた事を素直に謝りましょう>自主脱会PTSD

<コメント欄を読ませて頂くと家族は謝罪すべきといったような一方的なご家族への非難が含まれているように思われる記述が多いようで驚きましたが、経験者である方々が一様にご家族を責めておられるわけではないと自主脱会PTSDさんのご意見を伺って安心いたしました>佐藤

<以前「親が謝るべき」という指摘が多すぎとのコメントがあったと思う。恐らくは何が何でもただ謝れと思っている者は少ないと思う。
 しかし、この状況を「保護」と称し「監禁」と認めない親に「あれは監禁だった。」と認めて欲しいと思っているのは私だけではないと思う。この状況が「保護」であるなら、あり続けるなら、二度と帰るかと思ったとしても、誰が安心して盆だ正月だと親元に帰れるだろうか。
 心配をかけたことは詫びた。
 しかし、「監禁」されたのだ。「禁治産者」でも「準禁治産者」でもなく成人した一人の大人であった「保護」される謂れなど全くない>

<我が子を救おうとされる親御さんの気持ちを、一人前の大人なら、攻撃するだけではな、少しは理解してさしあげるべきだと、思います>自主脱会PTSD

<これはどう話しましょうか。
 まず、近しいものから受けた仕打ちほど、恐ろしく根深く後に残ります。
 兄弟間の「カインコンプレックス」も近親憎悪の例でしょう。私の場合、一方的、強引にですが話し合いは7ヶ月、出てからもしましたから、少なくみても自主脱会PTSDさんが思う以上の時間、労力はかけています。
 少し程度ならば理解している自負はあります。それでも最大級の形容詞を付けてなお難しいものです。
 一度壊れた親子、兄弟、親族の信頼関係は一生修復不可能になりかねないこと、身をもって体験中です。 それゆえ、特に検討中のご家族の方には思い止まって欲しいと思います>

 謝罪問題の議論はここで終わったが、私は監禁体験者である秀さんの意見に賛成する。
 その理由について以下に述べるとともに、監禁されたときの教会員の心的外傷、高山牧師の手紙で触れたTSD(心的外傷ストレス障害)について説明しておく。

 保護(拉致監禁)説得を、教団は信教の自由の問題として捉えるが、より本質的な問題は「子どもの精神に悪影響を及ぼし、親子関係を悪化させる」行為であることのほうにある、と私は認識している。

 親御さんがわが子を救おうとして、仕事までやめて行った保護説得の結果、脱会には成功したものの親子関係が悪化したのであれば、滑稽であり、悲劇としか言いようがない。

 ◇


 保護(拉致監禁)説得の体験者は少なく見積もって4000人はいる。大雑把に言って、このうち3000人は脱会し、1000人は何らかの形で脱出した。秀さんは1000人のうちの1人である。

  秀さんの親子関係が再生しないように、1000人すべてといっていいほど、親子関係はうまくいっていない。何年も断絶状態が続いている家庭もある。細い糸のように親子の交流が復活した家庭もあるが、その場合でも、統一教会と保護(拉致監禁)体験の話題はお互いに回避し、心からホンネで語り合う関係にまで復活していない。表面的・形式的な再生にすぎない。

 私が知る限りだが、例外は「門田家」と、「塩谷家」だけである。塩谷家の場合は、母親とは和解しつつあるが、父親とはまだである。

 なぜ、門田家と塩谷家では親子の交流が復活し、うまくいきつつあるのか。
 それは、サイト内リンクした記事を読んでもらえばわかる通り、秀さんがコメント欄で切望されたように、親が保護ではなく拉致監禁だったと認め、子どもに謝罪したからである。

 塩谷さんの母親が娘に出したメールを再録しておく。

「昨夜も眠れなく思い切って本を読みました。二人には何と謝っていいかわかりません。涙が溢れ、胸がつまりました。私自身もあの後、気が変になりそうで1ヶ月ほど無気力で寝こんでいました。
娘を何とか救いたいという切迫つまった思いからでした・・・省略・・・・・
今考えると、この方法(拉致監禁)は親も子供も精神を犯されると思います。こんな思いを二人にさせ、取り返しの出来ない過ちをしてしまい、心からお詫びします」(ここで出てくる2人とは娘とその夫のこと。「切迫つまった」は「せっぱつまった」のこと) (注1)

 しかし、ほとんどの親たちは、「あれは(牧師さんから言われたように)保護であり、わが子を邪悪な宗教団体から救おうとしたのだ。それなのに逃げやがって。どれだけの費用と時間を犠牲にしたか」といった苦々しい気分のままだと思う。だから、子どもに謝罪する気持ちなどまったく生まれない。

 では、脱会した子どもと親との関係はどうか。

 保護という観点からすると、親は保護説得に成功し、子どもはそれによって救出されたということになる。この日本語が正しければ、子どもは親に「救ってくれてありがとう」と感謝するようになるだろうし、保護説得という双方にとって苦闘の体験を経て、親子関係は子どもが統一教会に入信以前よりもより豊かになっていくはずだ。

 ところが、『我らの不快な隣人』の第1部に登場した宿谷麻子さん、高須美佐さん、中島裕美さんの3人の脱会者と親との関係は、脱会説得が成功したにもかかわらず、統一教会時代よりもより悪化している。ただし、宿谷家の親子関係は本で書いたように途中から再生する(この再生については、あとで再度、取り上げる)。

 では、他の脱会者の家庭はどうなのか。

 インタビューすることができなかったので(理由は拙著第11章に書いてあります)、静岡県立大学準教授の西田公昭氏の『マインド・コントロールとはなにか』(画面左側に掲載)から引用しておく。

「(脱会後)特に親子関係は引き続き解決を見ないのが通常である。多くの元信者は親との同居を好まず、新しい親子関係を模索しようとする。両者の関係の進展は急がず、4、5年といったゆっくりした時間の中で修復、改善するのが望ましいと思われる」

 西田氏は反統一教会の立場を鮮明にしている学者で、私と違って、牧師や弁護士から大勢の元信者を紹介され、インタビューを行っているので、この記述は正確だと判断していいだろう。ただし、長期間かけて親子関係が修復した例は書かれていない。「4、5年」という数字はさして根拠あるものではないだろう。

 親は保護に成功し、子どもは保護されたことによって救出され、子どもは親に感謝し、親子関係は子どもが統一教会に入信以前よりもより豊かになっているはずなのに、なぜ、親との同居を好まず、親子関係が改善するのに4、5年もかかるのか。

 脱会しなかった現役信者だけでなく、統一教会を脱会した元信者と親との関係もうまくいっていない。これは一体、どういうことなのか。
「家族の解体」でも、このことを書いたので、参照してください)

 親子関係が悪化したのは、保護説得という脱会方法が介在したからにほかならない。
 保護説得を実行し親子関係がうまくいかないことを嘆いている信者家族、また事実に誠実であろうとする人たちは、このことに目を背けてはならないと思います。

 ちなみに、宗教社会学者の渡辺太氏も、親子関係はうまくいっていないと指摘している。彼はマインドコントロール論が親子関係に悪影響を与えているという点を重視している。(拙著第12章参照、「マインドコントロール論の弊害」参照)。
 それも確かにあるが、一義的には保護説得、ストレートに言えば「拉致監禁」に原因を求めなければ、監禁体験者のトラウマやTSDを背景とした親子関係の悪化を説明することはできない。
 



 元信者たちは「あれは保護だった」と思い込もうとしている。 「辛い体験だったけど、あれは両親が私を統一教会から保護し、救い出すためにやった行為だ」。そう思ったほうが精神が安定するからだ。

 しかし、現実に起きたことは、両親・兄弟姉妹・親族に、自宅あるいは路上で襲われ、マンションに閉じ込められた?ということだ。

「統一教会から脱会するには保護されるしかなかったのだ」

 そう頭で理解しようとしても、あのときの恐怖体験、屈辱体験を拭うことはできない。衝撃的な体験や感情体験(一般にはトラウマと呼ばれる心的外傷体験)を、保護だったという思い込みによって、解決することは難しい。

 親は、邪悪な宗教団体からわが子を救うために保護し、成功したと思っているが、子どもからすれば、あのときの襲撃されたときの鬼のような親の形相、怒鳴り声、監禁中に牧師のほうにしか顔を向けない、別人格になったような親の姿は、忘れようとしてもそう簡単にできることではない。
(親の場合はたんなる思い込みではなく、感情的にもしっくりいっているはず。だから、「拉致監禁」という言葉に親たちは嫌悪し、反発する)

 しかながら、ことあるごとに、あのときの恐怖心や屈辱感などの感情が蘇ってくるようだと、日常生活を過ごすことができなくなる。このため、子どもたち(信者も脱会者も)は体験を封印(記憶の抑圧)する。

 心的外傷体験を理解することができなければ、イラク戦争のアメリカ帰還兵を想起すればいい。
「大量破壊兵器を保有するフセインを打倒するために」「イラクの平和を取り戻すためにテロリストをやっつけるんだ」という“教義”のもとに、兵士たちは戦地に向かう。

 しかし、戦地は苛酷である。仲間の足が胴体からちぎれた光景を目撃すれば、教義など吹っ飛んでしまい、筆舌につくしがたい衝撃を受ける(心的外傷体験)。帰還して、「正義のための犠牲だったんだ」と精神科医が心のケアをしても、衝撃的な体験が消えることはない。

 なかには、正義の戦争だと思い込み、再派兵命令に嬉々として従う兵士もいるかもしれない。
 脱会説得のために監禁現場にやってくる元信者のように、「統一教会から脱会するには保護説得しかなかった」と思い込むことによって、心的外傷体験を克服?した人もいるかもしれない。
 しかし、それらは例外であって、多くは西田氏が書いているように「(監禁した)親との同居を好まない」のだ。




 いったいに、心的外傷体験ほど理解しにくいことはない。血が流れたり、骨折したりする外傷と違って、心的外傷の場合、心が切り裂かれ、血が流れていても、外から見ることができないからだ。

 保護説得を体験した子ども(信者、元信者)の心の内側を親が理解しようとしない限り、親子関係はいつまでたっても、形式的・表面的なもの(あるいは断絶状態)にとどまり、より豊かな関係に発展することはありえないのだ。(注2)

(注1)塩谷さんの拉致監禁体験記は「拉致監禁をなくす会」のブログに書いてあります。
(注2)同じように、保護説得の体験については会のブログに書いてあります。現在9人の体験記が掲載されています。また、前述した宿谷さん、中島さんなどの体験は拙著の第1部を読んでください。



続く
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コメント

米本さんへ


その後のやり取りを拝読させていただいていました。
自主脱会PTSDさんには私のコメントにより、矢面に立たせてしまったのではないかと申し訳なく思う一方でご自身がつらい症状を抱えておられる中、周りへの思いやりのある言葉には頭が下がります。

実のところアベル食口といった言葉自体初耳で門外漢であることや、米本さんと2チャンの方が話題であったことから、タイミングをはずしてしまいました。

わざわざ記事に取り上げていただき恐縮です。

その前に、私は、拉致監禁は、非と思っていますし、脱会説得に直接第三者が関わること自体にも疑問を持っています。
もちろん本人が自由な意思の下にキリスト教牧師との対話を望めば家族が介入せずとも本人が直に牧師とコンタクトを取ればいいだけのことではないとか思います。

手塩にかけて育てた子供が、霊感商法や身分を偽った勧誘行為を行っている団体に身をおいている、あるいはすでに行っているとしたら、ご家族はなんとしてでも止めたいと思うのではないでしょうか。

話題の市橋容疑者のご両親のコメントからも、わが子への思いは誰しも同じでしょうが、そのわが子が犯した犯罪によって被害にあった故リンゼイさんやご両親に対しより多く配慮をされておられる姿勢を見て何か感じるものはないのだろうか。

霊感商法は数千万円単位での被害があり、また勧誘された人達が持つに至った恐怖感情など被害者になってしまった人への配慮から被害者への償いのほうが優先といわれておられる市橋容疑者のご両親の態度は立派だと思います。その点で既に北朝鮮の拉致被害者とは問題の質がちがうのではないでしょうか。

新たな被害者が出ないようにあるいはわが子を犯罪者にしたくない一心で、これしか方法がない方法がわからず途方にくれるご家族が、本来一生関わることもなかったであろう弁護士あるいはキリスト教の関係者と不本意に関わることになり拉致監禁に向かってしまうのは残念に思う一方で同情も禁じえません。

米本さんのレポを読ませて頂くと、ある家族は家業をたたんで資金をつくったり、嫁ぎ先から戻ってこられたお身内もあるようで、全てをなげ出し事に当たられた深い愛情(方法の是非はあっても)をどのように受け止めているのかそれを知りたいと思っています。

謝罪します。

 私の誤読・誤解に基づく投稿、それに関連した投稿を、すべて削除いたしました。

 佐藤喜正さん、佐藤さん(一さん)、幽霊食口さんにご迷惑をおかけしたことを、心から謝罪いたします。

お知らせ

 本ブログ記事は「一筆一論」のカテゴリーに入れていましたが、信者・元信者家族のみなさんに読んでもらいたと思い、「保護説得と親子関係」のカテゴリーを設け、そこに入れることにしました。
 どうかご愛読のほど、よろしくお願いいたします。

米本さんへ

削除された投稿を読ませていただいてました。私も宗教問題にかかわる掲示板はいくつか閲覧もしますし、時には書き込みもしますが、基本、管理者が信用できる人物の場合のみです。
米本さんの投稿には少々ショックを受けましたが、私ももう少し個性的なHNにすればよかったなぁと反省もしてます。
謝罪、削除の件、ともに了解です。
わざわざ、お気遣いいただきありがとうございます。

祝!19万アクセス

米本様へ。

祝!19万アクセス。

すごいペースですね。

おめでとうございます。
  • [2009/11/27 17:26]
  • URL |
  • へのへのもへじ
  • [ 編集 ]
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祝19万件!

ほんとにたくさんの方がアクセスしてるんですね。

これからも期待しています。

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