田中さんの懲戒請求に関する意見書(3)
「渡辺博弁護士の秘密めいた手紙(6)」
意見書(3)
(ゴチック部分が今回アップしたところです)
一、はじめに
(1)私の経歴と立場について
(2)田中幸子さんとの関わりについて
二、渡辺博弁護士の手紙について
(1)虚言と誇張(事実に合致せず)
(2)虚偽の記述は何が問題なのか
(3)渡辺氏の手紙の虚偽記述以外の問題点
三、田中幸子さんが懲戒請求を出すに至った経緯について
(3)渡辺氏の手紙の虚偽記述以外の問題点
イ)冒頭に書いたように、私が手紙を読んで驚いたあとに怒りを禁じ得なかったのは、手紙の末尾部分です。
「今、娘さんご両親が統一協会というカルト宗教の実態を理解し、この問題に詳しい日本基督教団の牧師、あるいは当職に相談し、娘さんの救出を検討することが必要です。
なお、当職からこのような手紙が送られてきたこと、ご両親において娘さんが統一協会の取り込まれたことを気付いたことを、絶対に娘さんには知らせないようにしてください。
ご両親から、娘さんに対し、この問題について問い詰めたりすることは絶対にやめてください。そのような行動を取れば、娘さんをますます統一協会の活動にのめり込ませることになり、また統一協会から救出することが非常に難しくなります。
至急、娘さんに気づかれることなく、当職宛にご連絡いただきたいと思います。
繰り返しますが、この手紙のこと、統一協会のこと等を、娘さんに話すことは絶対にやめてください」
執拗に、自分の手紙を田中幸子さんに知らせるな、また両親が「日本基督教団や当職」に相談することなく、統一教会に入信していることを問い詰めるなと諭しているのです。
田中さんは親権に服する必要のない成人した女性です。
なぜ、手紙を田中さんに見せてはいけないのでしょうか。
渡辺弁護士はおそらくこう抗弁するでしょう。
「田中さんは統一教会のマインドコントロール下にあり、両親が直接問い詰めたりすると、田中さんは統一教会の指示を仰ぐことになり、ますます統一協会の活動にのめり込まれせることになってしまう」
しかしながら、マインドコントロール論は前に少しばかり触れたように、宗教学者、宗教社会学者がこぞって批判している科学の名に値しない似非学説です。(拙著12章、390?394頁)
殺人罪などで起訴されたオウム信者の弁護団が、マインドコントロール論によって情状酌量を求めましたが、裁判官は相手にしませんでした。
また、渡辺弁護士たちは「青春を返せ裁判」で、マインドコントロールによって元信者は青春を奪われたと主張しましたが、これも相手にされませんでした。
唯一、岡山高裁が「説明概念」(つまり入信過程はマインドコントロール論で説明できる)として認めただけです。
拙著で詳しく述べましたが、人を限りなく「自律ゼロ、他律100(つまりロボット状態)」にすることはできないのです。
そもそも、自分が所属している団体が批判された場合、その批判が正しいかどうか団体に問い合わせるのがふつうです。団体はその批判を真っ向から否定するでしょう。そのあと、再び、批判した人(親など)に立ち向かうことになり、さらに批判されると、再び、団体に相談する。
こうしたやりとりを経て、団体への疑問が膨らんでいけば、その団体を辞めることになるわけです。一般社会ではよくある経験則です。
統一教会も同じです。自主脱会者が多いというのも当然のことなのです。
ロ)繰り返しますが、田中幸子さんは親権に服さない成人女性であり、親とは別の独立した人格をもっています。
田中さんが日本共産党に入党しようが、創価学会の会員になろうが、どんな主義主張、思想信条を持とうが、親に伝える必要はまるでありません。
それなのに、何らかの事情で田中さんが統一教会員であることを知った渡辺弁護士は、そのことを親に伝えました。これは田中さんに対するプライバシィの侵害以外の何者でもありません。
もし、第二東京弁護士会がこれを容認するのであれば、憲法上、重大な疑義が生じます。
ハ)弁護士職務基本規定には次のように定められています。
第9条 弁護士は、広告又は宣伝をするときは、虚偽又は誤導にわたる情報を提供してはならない。
第10条 弁護士は、品位を損なう広告又は宣伝をしてはならない。
渡辺弁護士の「誘い文」はこの2条に違反しています。
この弁護士の広告に関する職務規定を詳細に定めたのは、「弁護士の業務広告に関する規程」だと思います。
その6条ではこう定めています。
「弁護士は、特定の事件の当事者及び利害関係者で面識のない者に対して、郵便又はその他これらの者を名宛人として直接到達する方法で、当該事件の依頼を勧誘する広告をしてはならない。ただし、公益上の必要があるとして所属弁護士会の承認を得た場合についてはこの限りではない」
私が注目したのは「ただし書き」の部分です。
渡辺弁護士はこの「ただし書き部分」を武器に抗弁するのではないだろうかと推測したからです。
この「ただし書き」部分は2つに要素から成り立っています。一つは「公益上の必要がある場合」は手紙を出してもよろしいとなっています。しかし、その場合でも縛りがあって「所属弁護士会の承認を得た場合についてはこの限りではない」となっています。
この「承認を得た場合」に疑問があって少しばかり調べたのですが、不勉強のせいか、承認を得るための細則規程はわかりませんでした。
所属弁護士会から承認を得た広告であることを受け取った人が知るには、郵便物に適格マークならぬ「承認マーク」のスタンプが押してあるとか。渡辺弁護士の手紙は、「第二東京弁護士会の承認を得た手紙なのかどうか」はわかりません。
では、「公益上の必要がある場合」はどうでしょうか。
何らかの方法で、ある人が社会的に批判の多い統一教会に入信したことを弁護士として知った場合、公益上の必要があるとして、何らかのアクションを起こすことは認められるのでしょうか。
仮に認められるとしたら、その場合には渡辺博弁護士が田中幸子さんと面談を取り付けて(合意)、「統一教会はこれこれの問題を抱えている教団である。退会したほうがいい」と自ら直接説得する場合だけでしょう。
そうしたことも許されるのかどうかはなはだ疑問です。
しかしながら、渡辺弁護士は、実際にはそんなことはしていません。
田中幸子さんに直接コンタクトを取ることなく、どういう経緯があったのかはわかりませんが、田中さんの両親の住所を調べ、娘には知らせるなという秘密めいた手紙を送っているのです。
弁護士としての品位に欠ける行動です。
(ニ)もし、田中さんの両親が「弁護士の手紙」を真に受け、手紙にある通り、「日本基督教団か当職」に連絡した場合はどうなるのでしょうか。
当職すなわち渡辺弁護士に両親が相談した場合、渡辺弁護士が田中幸子さんに合意を取り付け、自らが脱会説得するということでしょうか。
それは考えられません。
両親が問い詰めたら「ますます統一協会の活動にのめり込ませることになり」、弁護士が問い詰めたらそうならない。
あらゆることを考えても、そんなことはあり得ないからです。
渡辺弁護士のところに相談があった場合、日本基督教団の牧師を紹介すると思います。それ以外、考えられませんから。
ちなみに、渡辺弁護士は日本基督教団の顧問弁護士になっています。
では、渡辺弁護士から紹介され、両親が日本基督教団の牧師に会った場合はどうなるのでしょうか。前述したのと同じ疑問が生じます。
両親が問い詰めたら「ますます統一協会の活動にのめり込ませることになり」、日本基督教団の牧師が問い詰めたらそうならない。
やはり、あらゆることを考えても、それはあり得ないことでしょう。
牧師が問い詰めても、田中さんを統一教会のほうに行かせない唯一の方法は、日本基督教団のいう「保護説得」、広辞苑などをもとにしたふつうの日本語でいえば、拉致監禁し、監禁下で脱退説得を行うということにほかなりません。(筆者注、脱退はママ)
日本基督教団に所属する牧師が強制説得を行っていた。
このことが初めて公的な場で明らかにされたのは、拉致監禁を体験した今利理絵氏が横浜地裁に提訴したからです。(拙著117?119頁)
このとき、今利氏が訴えた相手(日本基督教団に所属する横浜市・戸塚教会の黒鳥牧師と現在、行田市・行田教会の清水牧師)の代理人になったうちの一人が渡辺弁護士です。
客観的にいえば、渡辺弁護士は田中さんの両親を、裁判で争われたような日本基督教団の牧師に紹介するということです。
その牧師たちはいまだ「保護説得という脱会手法はやめることにした」という公的な見解を述べていないので、相も変わらず、“保護”説得しかないと信者家族に説明しているとしか考えられません。
今利理絵氏に対して両親が行った行動は、今利氏と両親との和解の過程で、最高裁が「問題あり」としています。
渡辺弁護士の手紙→田中さんの両親が渡辺弁護士に相談→渡辺弁護士が両親を日本基督教団に紹介→田中さんの両親が幸子さんを拉致監禁→田中さんを同教団の牧師が脱会説得する。
こうした一連の流れは違法性の強いものです。
渡辺弁護士の手紙は、違法性を生じさせる原因となるものであります。
明らかに弁護士法第56条が規定する懲戒事由に該たります。
(ホ)渡辺弁護士の手紙を一読すれば、善意の手紙のように思えます。
しかし、子細に検討すると、善意かどうか疑わしい。
再度、手紙を引用します。
「今、娘さんご両親が統一協会というカルト宗教の実態を理解し、この問題に詳しい日本基督教団の牧師、あるいは当職に相談し、娘さんの救出を検討することが必要です」
一般人にとって「日本基督教団」は初めて聞く団体でしょう。プロテスタントの教団・教派は実に多く、「日本イエスキリスト教団」「同盟基督教団」など似たような名前の団体もあります。
手紙を受け取った人が「日本基督教団の牧師に相談」をと言われても、電話番号もわからなければ、担当牧師の名前もわかりません。それに対して「当職」のほうは住所と電話番号が明記されています。
「日本基督教団の牧師、あるいは当職に相談」をと言われても、田中さんの両親は当職、渡辺弁護士に相談する以外にないようになっています。
もし善意の手紙であれば、日本基督教団の電話番号、担当牧師の名前も明記されてあって然るべきです。(それでも、手紙はプライバシィを侵害するものであり、非行行為なのですが)
そうすると、なぜ、渡辺弁護士は当職のほうに相談が来るような文面を書いたのかという疑問が生まれます。
一般的に、牧師が信者を脱会説得し、信者が脱会の意思表明した場合、牧師は「献金や物品購入費を統一教会に返還請求するように」と勧めます。それに応じる意向を示せば、牧師は知り合いの弁護士を紹介します。
これは、これまでほぼ例外なく行われてきたことです。
逆に、弁護士が牧師を紹介した場合、返還請求の段となると、牧師は信者家族を紹介してくれた弁護士に返還請求の依頼をします。
つまり、渡辺弁護士の頭には<脱会説得は牧師、返還請求の代理人は「当職」>という図式が入っているということです。
全国弁連に所属する弁護士は、返還請求を無料で行ってはいません。
私は渡辺弁護士とは面識があり、謹厳実直な弁護士というイメージがあります。
弁護士報酬を目的に、田中さんの両親に手紙を送ったとは思えませんし、思いたくもありません。
しかしながら、信者が脱会し返還請求に同意すれば、弁護士に報酬が入るというのは厳然とした事実です。(著書385頁<注8>参照)
(へ)ところで、渡辺弁護士が田中さんの両親だけに送っていたとしたら、前述(ホ)のようなことは書かなかったでしょう。
田中さんから渡辺弁護士の手紙を見せてもらったあと、怒りを禁じ得なかった私は、かなりの労力を割いて調べました。その結果、田中さんを含めて6人の教会員の家族のところに、ほぼ同じ文面で手紙を渡辺弁護士が出していることが判明しました。
私がごく細い取材ルートから調べた結果が6件ですから、おそらくその10倍ぐらいの家に、渡辺弁護士は手紙を出しているのでしょう。
どのようにして信者の家族の住所を知ることができたのでしょうか。
謹厳実直なイメージは崩れ、渡辺弁護士には気味の悪さを感じるようになっています。
田中さんを除く5人のケースは、こうなっています。
拉致監禁が存在したかどうか、また返還請求を行い渡辺弁護士に報酬をはらったのかどうかはわかりませんが、2人は脱会しています。
1人は家族の承諾を得て先に手紙をポストから取ったため、ことなきを得ています。
もう2人の家族は、渡辺弁護士の忠告を無視して、直接本人に問い質したために、トラブルが生じ、親子関係は最悪の状態になってしまいました。
渡辺弁護士の手紙(広告)は、「訴訟する意思のない依頼者を煽動して争いを起こさせる行為」であり、「相手の状況を考えずに無神経に事件漁りに及ぶ行為」と評価するしかありません。
結論 渡辺弁護士の行為は弁護士法第1条、第2条、弁護士職務基本規定第6条、第9条、第10条、弁護士の業務広告規定第3条1、2、6項、第6条に違反するものであり懲戒すべきです(弁護士法56条)。
また、東京第二弁護士会は広告規定第12条に基づき、違反行為の排除等をすべきだと考えます。
三、田中幸子さんが懲戒請求を出すに至った経緯について
私は「弁護士の非行問題」に関心がありまして、別冊宝島『モンダイの弁護士』を書いたことがあります。その後も『週刊現代』や『週刊新潮』で懲戒処分を受けた弁護士のことを書いたことがあります。
私自身、山梨県弁護士会に所属する弁護士を懲戒請求したことがあります(別冊宝島『内部告発』で書いた、看護婦替え玉証人を容認した疑いのある弁護士です)。
田中さんから手紙を見せてもらいながら相談を受けましたが、「懲戒請求」という制度があることを伝え、田中さんが陳述書ならびに懲戒請求書を書くときには相談を受けました。
(添付資料)
(1) 月刊『現代』04年11月号所収の拙稿「書かれざる『宗教監禁』の恐怖と悲劇」
(2) 拙著『我らの不快な隣人』(情報センター出版局)?必要なところに付箋をつけ、マーキングしました。
(3) 監禁事例リスト?拙著の表をもとに作成したものです。
- [2009/10/29 10:03]
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コメント
追記
同感です。
下記、管理人さんの声に。
わたしも同感です。
>渡辺弁護士の手紙(広告)は、「訴訟する意思のない依頼者を煽動して争いを起こさせる行為」であり、「>相手の状況を考えずに無神経に事件漁りに及ぶ行為」と評価するしかありません。
弁護士村
読み返して見ましたが,米本さんが書かれた医療過誤の件は,なんとも救いようがない感じがして,当時は随分暗い気持ちになったことを思い出しました。弁護士村の体質がとても良くわかります。
いきなりこんなとんでもない内容の手紙が、弁護士とか牧師から来たら親はびっくりしますよね・・・。
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